読書日記

  不幸を大きくするのは

 『幸福論』(アラン)より、
 しかしながら、正真正銘の不幸もかなりある。だが、想像力につい引きずられて不幸を人々がつけ加えるということもほんとうだ。君は毎日少なくとも一人は、自分のやっている仕事に不満を言う人に出会うだろう。彼の言い分にはかなりの説得力があるようにいつも見える。
 しかしながら、次のことはよく知って欲しい。そういう言い分には際限がないこと、そして悲しみはさらに悲しみを生み出すこと。なぜなら、そうやって運命を嘆くことによって、君は自分の不幸を大きくして、一切の笑う望みを、あらかじめ自分から奪い去って、そのため自分自身の胃もさらにいっそう悪くなるだろうから。
 誰の人生にも多かれ少なかれ、大きかれ小さかれ不幸はあります。
 不幸に遭ったとき、ある程度不幸な気もちになるのはしかたがないでしょう。
 でも、必要以上に自分の不幸を大きくしてしまっている人が多いのでしょう。

 自分の不幸を嘆いたり、悲しんだり、不平を言ったり、落ち込んだりすれば、余計に不幸な気もちになるのです。
 物事を悪く考えると、不幸な気もちが強くなります。想像力を働かせれば悪い考えは際限なくいくらでもできます。
 また、一つの不幸を何度も蒸し返すことで、不幸を長引かせてしまいます。
 このようなことが、心身の健康に悪影響を及ぼし、さらには不幸の悪循環に陥ってしまうことすらあります。

 遭遇した不幸に対しては、まずは「こういうこともある」などと現実を受け入れることで、不幸な気もちを少しでも小さくできるといいでしょう。
 その上で、その問題に対して今やる必要があることがあればやる。
 あとは、問題があっても(それなりに)幸せに暮らせるように心がけることが大事だと思います。幸せを感じることは心身の健康にもいいでしょう(幸福は良薬)。
 そして、時間をかけてでも不幸を幸せに変えられると、さらにいいでしょう。

 それでも、ふとその不幸について考えてしまうことはあるでしょう。想像力がひねりだしたもっともらしい言い分を信じて、情念に流されないことが重要です。
 自分の不幸になる考え方に気づいて、「このことを考えるのはやめよう」と途中でストップできればいいのです。「こんなことを考えるより、○○しよう」と切り替えられると、なおいいでしょう。また、うまく気分転換ができるようになると、さらにいいでしょう。

 不幸な気もちを少しでも小さく、不幸な(気もちの)時間を少しでも短くできるようになれば、その分幸せに暮らしやすくなるのではないでしょうか。



   

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