読書日記

  死の恐れを克服する

 『生きるということ』(エーリッヒ・フロム)より、
 死ぬことの恐れを真に克服するには、ただ一つの方法しかなく、その方法は、生命に執着しないこと、生命を所有として経験しないこと、によるものである。

 死ぬことの恐れをなくすことは、死の準備として始まってはならないのであって、持つ様式を減少し、ある様式を増大するためのたえざる努力として始まらなければならない。スピノザが言うように、賢明な人は生について考え、死については考えない。
 自らの生命は自分の持ち物という思いが強いと、それだけそれを失うこと、すなわち死が恐ろしくなるのかもしれません。
 生命がいつか失われる(死ぬ)のは「しかたがない」と受け入れることができれば、死の恐れは少しは小さくなるのでしょう。
 または、生命は元々、宇宙や地球に存在するものであり、現在の形は失われても存在(物質/魂)として残ると考えてもいいのではないでしょうか。
 死んだら「天国や極楽に行ける」や「生まれ変わる」などと信じることで、死の恐れから逃れられる人もいるでしょう。

 「死」という生命の終わりを考えるのなら、「持つ様式」よりも「ある様式」のほうが価値があると考えられるでしょう。
 いろんなものを努力して得ても、死んだら価値がなくなってしまうのです。今あるもの(事・人・物)を大切に、今の心(理想は幸せ)を大切に生きたほうがいいでしょう。
 それにもし、あの世があるとしたら、持ち物は持っていけないが、心(の能力)は持っていけるはずです。今の心が失われるとしたら、それは「自分」ではないと思います。

 自分の死について考えると恐ろしい気もちになるのはしかたがありません。
 そんな時には、死を想うことで生を大切に感じられるといいでしょう。時間の余裕があれば、自分の幸せ・生活・生き方なんのために生きるのか生きているうちにしたいことなどを考えてみるのもいいでしょう。
 死の準備を考えることで、心が少しでも落ちついたり、やりたいことが見つかったりするのなら、それも悪くはないと思います。

 生について真剣に考え、懸命に生き、今を大切にすることが、死について(必要以上に)考えずに/恐れずにすむ方法なのではないでしょうか。



   

次の日の日記

最新の日記

生きるということ』エーリッヒ・フロム

ホームページ