私は60歳で定年になったら(寿命を70歳として)、あとの10年をのんびり暮らしたいと思っていた。好きな本を読んで、気が向いたら近くを散歩する。お昼には駅前まで足を伸ばして、焼きたてのパンを買い、ゆっくりと昼食を味わう。そして、夕食は早めにして胃を完全に空にして眠りに就く。日々、快食、快眠、快便を楽しむのである。健康な心身をつくり、その心地よさを感じて生活できるようになれたら、それだけでも幸せなことだと思います。
こんなふうにして心地よさを味わうのが老後の楽しみであり、人生の満足である。安らかな死の準備ともなるだろう。
しかし、心地よさについて思いをめぐらせていたらこの老後の希望も少しずつ変わったきた。というのは生活を楽しむのは何も定年後に限ったことではなく、定年前だって、さらに今すぐにだってできることだし、したいことではないか、と思うからである。
だから、私は自分の定年や寿命にこだわらないで、死にこだわらないで、目の前の毎日を楽しみたいと思う。
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