しあわせ日記

7月3日(月) 万物流転

 『バカの壁』(養老孟司)より、
 昔の書物を読むと、人間が常に変わることと、個性ということが一致しない、という思想が繰り返し出てくる。
 『平家物語』の書き出しはまさにそうです。
 「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」という文から、どういうことを読み取るべきか。鐘の音は物理学的に考えれば、いつも同じように響く。しかし、それが何故、その時々で違って聞こえてくるのか。それは、人間がひたすら変わっているからです。聞くほうの気分が違えば、鐘の音が違って聞こえる。
 これと同じことを、私は本を読んで感じることがよくあります。
 いい本は何度読んでもいい、と私は思っています。

 たとえば、『竜馬がゆく』は20回以上読んでいるでしょう。
 それでも、毎回楽しいし、たくさんのヒントをもらい、いろんなことを学べます。
 その時に何に興味があるか、何かテーマをもっているかによって、学べることが違います。
 また、自分の心が成長するにつれて、感じ方や学べることも変わってきているのではないかと思います。

 もちろん、本の内容が変わるわけではありません。
 読む自分が変わっているから、感じることや学べることが違うのです。

 幸不幸もその時の自分によって変わります。
 気分が悪い時には(不幸になる考え方をして)不幸な気もちになりやく、気分がいい時には幸せになる考え方や行動がしやすいと思います。
 環境が変わらなくても自分が成長すれば、あまり不幸にならずに、それなりに幸せに過ごせるようになれると思います。

 自分が幸せになれない/不幸なのを、「まわりが××だから」と人や環境のせいにしていてもつらいだけです。変えようのないことは現実として受け入れ自分(の心)を変えようとしたほうが、自分のためにいいのではないでしょうか。
 また、「自分は××だから」と自分の性格や容姿や能力などのせいにするのは自分をいじめて放っておくようなものです。「なりたい自分」「幸せになれる自分」を目指して少しずつ自分を育てていくことが大切だと思います。
 『方丈記』の冒頭もまったく同じ。
 「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」
 川がある、それは情報だから同じだけど、川を構成している水は見るたびに変わっているじゃないか。
 人間も世界もまったく同じで、万物流転である。
 同じように見えても、人生は人それぞれに違います。また、その時々で自分も変わっているのだと思います。
 自分も自分を取り巻く環境も必ず変わっていきます。ならば、できる範囲で少しでもいい方向・幸せな方向に変えていく努力をしたほうがいいのではないでしょうか。
 そんな時、川や水から学べることもいろいろあると思います。



   

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