料理でも、人生でも、もともとのままのシンプルを維持することではなく、成熟の後にシンプルを獲得することに、妙味がある。洗練された、複雑絶妙の味がある。純化されたエキスがある。 人生は、大道を歩もうが、枝道をたどろうが、煮たり、焼いたり、叩いたり、発酵させたり、ときに腐らせたりというような変遷をこうむって、初めて妙味を発揮し、老熟に達するのである。