読書日記
仕方がない
『養老訓』(養老孟司)より、
「仕方がない」という感覚がないのが今の人、特に都会の人です。
「仕方がないでは済まされないぞ」とすぐに言いたがるわけです。
農業をやっている人はよくわかっているはずです。明日の天気はどうかだってこっちの予想通りにはならないし、思い通りになんかなるはずがない。考えても「仕方がない」ことの連続です。少々まずいことが起こっても、農民は「仕方がない」と言っていたのです。
このように物事を考える根本が、都会とはちょうど正反対です。
考えても仕方がないことがあります。
たとえば、過去の出来事、将来のこと、人のこと、自分にはどうしようもないこと、・・・。
また、イヤなことがある、思うようにいかないことがある、イヤな人がいる、人づきあいで気まずいことがある、悩みがあるなども、「仕方がない」と考えたほうがいいのではないかと思います。
考えても仕方がないことを考えるのはよそうと心がけ、そのことを自分が考えさえしなければ大して問題ことが多いのです。
ところが、「仕方がないで済ませない」人は、いつまでもそのことを考えてイヤな気分になったり悩み苦しんだりしてしまいます。
なぜ「仕方がない」で済ませられないのかというと、それは「こういうこともある」「仕方がない」と現実を受け入れることができないからだと思います。そのために、悪感情がおさまらずに、さらに不幸になる考え方をして悪感情をふくらませることにもなってしまいます。
仕方がないことはできるだけ考えないようにし、どうにもならないことは慢性的な問題としてうまくつきあい、悩みや問題があってもそれなりに幸せに暮らせるようになれたらいいのではないでしょうか。