「竜馬がゆく」から
96/ 9/11 (1)竜馬との出会い
96/10/11 (2)竜馬の勉強法
96/11/11 (3)竜馬の人柄
96/11/21 (4)竜馬の人生観
96/12/ 1 (5)竜馬の心理学
96/12/16 (6)竜馬の人気考
96/12/30 (7)竜馬の感動する心
97/ 1/13 (8)竜馬の合理性
97/ 2/10 (9)竜馬の美人計
97/ 3/10 (10)竜馬の空城計
97/ 7/ 3 読書ノート「竜馬がゆく」
『竜馬がゆく』(1)竜馬との出会い
司馬遼太郎著・文春文庫
私の人生に大きな影響を与え続けている本である。最近でも毎年1回は読み返している。今年も司馬遼太郎さんの訃報を聞いて読み始めた。たぶん、15回くらいは読んでいると思う。
竜馬は若い頃から、人に大ボラと言われるような夢を語り、そして死ぬまで夢を追い続けました。
私も20代半ばに読んだ時に「夢をもって生きよう」と決意しました。
そして、会社をやめて独立しパソコンソフトを作り、「幸せになる方法」という本を出版し、「幸せのホームページ」を始めました。すべては、「竜馬がゆく」から始まったと思っています。
『竜馬がゆく』(2)竜馬の勉強法
司馬遼太郎著・文春文庫
竜馬は人や本から多くのことを学んでいる。かつ自分でよく考えている。だから、広範な視野と創造性と的確な時流の読みがある。
私はよく本を読む。以前はできるだけ速く、より多くの本を読もうとしていた。でもそれでは得ることが少ないのに気づいた。1回だけ速読した本の内容についてはほとんど憶えていない。読んでいるときに楽しければいいのではないかという意見もある。またそういう本もある。でも、私はもっと本から多くを学びたいと思っている。
最近では、いい本は繰り返し読んだり、途中で考えながら読んだりする。いい本を繰り返し読むことはすごくいいことだと思う。それを実際に教えてくれたのが「竜馬がゆく」だった。何回読んでも読んでいて楽しい。感動する。いろいろなことを考えさせてもらえる。そんな本に出会えて幸せだと思う。
竜馬がゆく(3)竜馬の人柄
司馬遼太郎・文春文庫
「竜馬がゆく」を15回くらいは読んでいるのに、竜馬がどんな人間かよくわからない。魅力的なんだけど、ひとりの人間としてのイメージがまとまらない。
本の中の文章をひいてみる。
「平素無愛想のくせに、いったんよろこぶとなると、相手の心にしみる喜びかたをする」
「一見激情家にはみえないが、思考の脂肪が厚いため、いったんやぶれると感情が体いっぱいに吹き荒れる」
表面的には無愛想で口数は少ないほうだったみたいだ。それでも人気のある人(昔も今も、男にも女にも)。人を動かせる人。
当時指折りの剣の達人、船を動かせるサムライ、日本最初の商社の設立者、明治維新の立役者。
おねえさん子、泣き虫で寝小便たれの子どもだった人、筆マメ、新婚旅行をした人、革靴や香水を買う不精者、三味線をひける人。
学校嫌いの勉強家、人を知る人、自分の人生を考えた、夢を追い続ける人。
ますますわからなくなる。でも幸せの達人であることはまちがいない。そこでもっと「竜馬がゆく」から幸せのヒントを探してみようと思う。
ということで、今回から「竜馬がゆく」はレギュラーになります。
竜馬がゆく(4)竜馬の人生観
司馬遼太郎・文春文庫
竜馬の人生観の第一は、「世に生を得るは事を成すにあり」だ。
もう1つ、人間五十年・・・。
「人の一生というのはたかが五十年そこそこである。
いったん志を抱けば、この志にむかって事が進捗するような手段のみをとり、
いやしくも弱気を発してはいけない。
たとえその目的が成就できなくても、その目的への道中で死ぬべきだ」
しかし、急いては事をし損じる。
「自分を強くし、他人に負けない自分を作りあげてからでなければ、
天下の大事は成せまい」
そして、好きこそものの上手なれ。
「人間というものはいかなる場合でも、
好きな道、得手の道を捨ててはならんものじゃ」
でも、やるときゃやる。
「(命は1つしかない)1つしかないからどんどん投げこむんだ。
大事にしていたところで人生の大事は成るか」
「時代が違う」、「今はそんなことのできる世の中じゃない」、「自分は竜馬のような人とは違う」などと一言で片づけてしまっては身も蓋もない。だからどうしろとは私は言えない。ただこのような気概で生きれば、何かを成すことができるような気がする。竜馬なら「勝手にしろ!おれはおれの道を行く」と言うかもしれない。
ここでの引用はすべて『竜馬がゆく』によっている。ここでの竜馬は歴史小説『竜馬がゆく』の主人公・坂本竜馬についてである。
竜馬がゆく(5)竜馬の心理学
司馬遼太郎・文春文庫
竜馬は人を動かせる人である。それは人の心理をつかむことに長けているに違いない。そこで、見つけたのが
「人間の動き・働きの八割までは、そういう気の発作だよ」
人間は頭じゃなくて気持ち、理論より感情で動くもの。
理屈でせまるより、相手の感情に訴え人を動かす。
こんなことでしょうか。ではもう1つ。
「竜馬は議論しない。議論などは、よほど重大なときでないかぎりしてはならぬといいきかせている。もし議論に勝ったとせよ、相手の名誉をうばうだけのことである。通常、人間は議論に負けても自分の所論や生き方は変えぬ生きものだし、負けたあと持つのは負けた恨みだけである」
なるほど。私も気をつけよう。でも難しそう。
では最後に、これば司馬遼太郎さんの創作の部分だと思いますが、
(薩長同盟を結ぶべく、竜馬の同士・中岡慎太郎が西郷隆盛を長州につれてきて、桂小五郎と会談させようとした。桂は待っていたが、船できた西郷は急きょ長州前を通過して京へ行ってしまった。桂は激怒した。そこで)
竜馬「わしに妙案がある。長州興亡に関する案だ。聴くか」 桂「聴こう」
竜馬「腹立ちは、おさまったか」 桂「おさまらぬ」
竜馬「では、おさまってから言おう」 桂「卑怯ではないか」
竜馬「怒っている相手にいっても仕方がないさ」 桂「もう怒ってはおらぬ」
なかなかのものである。
竜馬は「人の感情」というものを知っている。
『竜馬がゆく』(6)竜馬の人気考
司馬遼太郎著・文春文庫
竜馬は事を成すにあたって人気が大事だと考えている。
「人間、不人気ではなにも出来ない。
いかに正義を行なおうと、ことごとく悪意にとられ、
ついにはみずから事を捨てざるをえなくなる」
そして、自分のまわりの人をそういう観点で見ている。
(武市半平太は)「仕事をあせるがままに人殺しになったことだ。
暗ければ民はついて来ぬ」(手段を選ばない)
(清河八郎は) 「人を引きずってゆくときに、人の心理をつかんでいない。
だから、事成るという寸前に同士からほっぽりだされ、
つねに失敗してきている」(口先だけで誠意がない)
また、ブームについて知っている。
「相場買いの客は大切にせい。それが時勢に勝つ道だ」
相場買いの客とはブームにのる人のこと。よくブームや流行にのる人のことをバカにする人がいる。また、ブームを作った人をバカにする人もいる。例えば、小室哲哉さんの曲の悪口を言う人がよくいる。嫉妬して言っている。だって、売れていない人の曲の悪口はいわない。小室哲哉さんは相場買いの客を大切にしている。そして時勢に勝った。
こんなことを百年以上前の幕末に考えた人間がいたなんて信じられない。
『竜馬がゆく』(7)竜馬の感動する心
司馬遼太郎著・文春文庫
竜馬は無愛想で無口だけど、無感情な人ではない。
二十歳前、竜馬は江戸への旅路ではじめて富士山をみて感動した。
「血の気の熱いころにこの風景をみて感じぬ人間は、どれほど才があっても、ろくなやつにはなるまい」
私も12月7・8日にバスケットの合宿で山中湖へ行ってきた。7日は早く行き、湖畔で1時間、湖と富士山を眺めていた。やっぱり、富士山はいい。写真とは違い、実物はすごい。迫力がある。何かを感じさせてくれる。夕暮れ時もきれいだった。8日も早朝に散歩して富士山を見た。遅くまで飲んでいたので、日の出には間に合わなかった。残念。
ということで、富士山のホームページ(定点カメラ)です。夜でも大丈夫ですよ。富士山の過去のファイン・ビューを見ることができます。
感動する心って大事にしたいな。それも幸せになる方法じゃないかな。
ちなみにはじめて富士山を見て、若い竜馬は。
「日本一の男になりたいと思った」
『竜馬がゆく』(8)竜馬の合理性
司馬遼太郎著・文春文庫
竜馬には合理的なところがある。
「半刻、一刻の座禅をするよりも、むしろそのつもりになって歩けばよい」
私も歩くの大好き。
また、勝海舟との会話。
勝 「腹が減った。ところで、もう日も暮れるが、いまから普請場を見るか、
それともそれは明朝にしてめしを食うか。二者いずれをえらぼう」
竜馬「めしを食いながら普請場を見ましょう」
にぎり飯を食べながら普請場(神戸海軍塾の工事現場)を見て歩いた。
常識と思われることや人の目にとらわれない、柔軟な発想がすばらしいのだと思う。もっとも竜馬が言えば「さすが」と思えるが、頭でっかちな人が言ったら「こざかしい」と反感を持つかもしれない。
もし家で奥さんが「ご飯にする?おフロにする?」って言ったとき、「おフロの中でご飯を食べる」なんて決して言わないでください。まぁ今時、そんなこという奥さんもいないとは思いますが。
とかいって、私は今度フロの中でご飯を食べてみよう。どんな感じがするのかなあ。ところで、何を食べようかな?
『竜馬がゆく』(9)竜馬の美人計
司馬遼太郎著・文春文庫
少し前に本「人を動かす」で兵法三十六計について書いた。竜馬は人を動かすことができる人だ。そこで竜馬の人を動かす秘訣を兵法三十六の敗戦の計をヒントとして探してみることにします。
第一は「美人計」。私は、人を動かすにはまず、その人のほしいものを与えること、つまり、人を幸せにすることと考える。その結果として相手も自分に協力してくれる。互いに与え合えること、協力し合えることは幸せな関係だと思う。
竜馬は人が利で動くことをよく知っている。薩長同盟にしても、主義をもって手を握らせることが困難だと思うと、実利をもって握手させるという、ひどく現実的なことをした。幕府に隠れて、薩摩の名義で長州の武器を買ったり、長州の米を薩摩に回してあげようとしたりした。そういうことの積み重ねが両者の心理的な歩み寄りにつながることをわかっていた。
高知には「竜馬の居眠り堤」があるという。竜馬が18歳の頃、堤防工事に参加した。約10工区のうちの1区の責任者を任された。人夫を100人も使う。竜馬自身はほとんど松の木によりかかって膝を抱えて居眠りをしていた。ところが竜馬の区は他の区より半分の日数で仕上がってしまった。なぜか。竜馬はまず仕事をいくつかに分け、その責任者を巧みに選び、競争させた。あとは毎日でき具合を見て、できによってほうびをやった。
これと同じような話は、豊臣秀吉にも中国にもあったと記憶している。竜馬が知っていた可能性はある。しかし、実際にそれをうまくできるところは並の人ではない。
竜馬は晩年、いくつかの藩を相手に出資や借金を頼む。そのときには必ず相手の儲けのことをちゃんと説明する。当時の武士としては異例だろう。
竜馬は互いに相手を利用すればいいと考える。それぞれの下心があって、特に支障がなければ、互いに利益を得ることを良しとする。ひどく現実的で、打算的な考え方に見えなくもない。しかし、互いに協力し合って大きな目標を達成すると考えれば、人それぞれが小さな目的を持っていたとしてもいいと思う。
いっしょに幸せになれることに、人を誘って、人と力を合わせてやればいい。その時に自分のことだけでなく、協力者のためを考えられる人が、人を動かせる人、人を幸せにできる人だと思う。
『竜馬がゆく』(10)竜馬の空城計
司馬遼太郎著・文春文庫
まず「空城計」について説明するために、有名な例を紹介します。
「三国志」の中で、諸葛孔明が2千の兵で城を守っているところへ、司馬仲達が15万の兵を率いて攻め寄せた。その時、孔明は城内の兵を隠し、門を開いた。つまり、城を空にして見せた。すると、仲達は「これはおかしい、孔明のことだから何か策略があるに違いない」と兵をひいてしまった。
自分が不利な時に、相手の意表をついた策戦だ。私はこれをヒントに、弱い自分をされけ出し人を動かすこと、人の予想以上にまっ正直を貫く方法を想像する。「Honesty is the best policy.」だ。
例えば、知識や経験が少ないセールマンがキャリアのある相手に対してセールスをする時、正直に「私は未熟だからよろしくお願いします。いろいろと教えてください」と、相手の話を聞くことに努める。相手は先輩と敬われて気分が悪いわけがない。自分の話を聞いてもらうことは内心うれしいものだ。「しょうがない。少し面倒みてやるか」となる。これがいつもうまくいくほど世の中は甘くはないが、自分より知識やキャリアのある相手を説き伏せようとするよりは可能性がありそうだ。
これはやる人の人柄が大きく左右する。いわゆる憎めないヤツがやると効果的だ。また、やる相手も体育会系、親分肌なら効果が期待できる。セールスの成績のいい人には聞き上手な人が多いという。一見無口でバイタリティがなさそうに見える人が優秀なセールスマンだったりする場合がある。
話はやっと竜馬に移る。竜馬が江戸での剣術修行を終え土佐に帰っている時、竜馬の仲間の豪士の1人が、鬼山田と呼ばれる上士に無礼討ちされた。殺された豪士の兄・池田寅之進が、それを聞いて怒って駆けつけ、鬼山田を仇として討った。これにより、上士対豪士の騒動となり、それぞれがある屋敷に終結した。竜馬も。しかし、竜馬はふらりと上士の終結する屋敷に単身乗り込んだ。「藩士たがいに血みどろになって相戦う。得るところは、山内家24万石のお取りつぶしだけです」と竜馬は上士連中に言う。この時は相手方も納得しなかったが、竜馬の剣の腕を恐れたのか、あっけにとられたのか、わからないが、竜馬が堂々と引き上げるのを黙って見送った。この事件は池田寅之進が腹を切ったことで、断ち切れになった。
これと同じような単身乗り込みの話は、羽柴秀吉にも、勝海舟にもある。相手の意表をついている。しかも、相手の下手に出て成功している。まぁ、やる人の器量が大きいとは思う。しかし考え方によっては、まっ正直に頭を下げていると考えられる。
私は自分を必要以上に飾らず、正直に誠意をもって相手に接することが大事だと思う。また謝る時には、言い訳をせず、相手の悪いところは指摘せずに、ひたすら誠実に謝るのがいいと思っている。「空城計」をこういうことを考えるヒントとしている。
私は竜馬の生き方の中に「至誠」ということを感じている。
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