読書日記

  万能は幸せではない

 PHP12月号の「明日への思い」は、角野栄子さん(作家)。
 もしも、すべての願いが叶えられる魔法を与えられたら、すべてが自分の思い通りに運んで、求めるものすべてが手に入るとしたら、それは幸せなことでしょうか。もしも人間が万能だとすれば、人間は幸福になれるのでしょうか。
 たくさんのものを手に入れることは、たくさんのことを失うことにもつながっていく。
 自分が願うものが魔法で手に入ったら、はじめのうちは幸せだと思います。
 でも、そのうちに手に入るのが当たり前と思ってしまい、幸せを感じられなくなってしまうのかもしれません。
 なんでも自分の思い通りになるのは、どうなのでしょうか。たとえば、幸せばかりのストーリーの小説も映画もドラマもおもしろくないでしょう。すべて思い通りになってしまう(簡単な)ゲームをやる人はいないのではないでしょうか。

 自分が望む何かを手に入れようと、努力した分、頑張った分、苦労や困難が多かった分、余計にそれを得たときに感じる幸福感は強いのだと思います。手に入れた幸せの自分にとっての価値も大きくなるでしょう。
 魔法で何かを手に入れても、それほどうれしくないし、得られたものの有難みも感じられないのではないでしょうか。

 すべての願いが叶えられる魔法を与えられたら、幸せになれる使い方はいろいろあると思います。
 たとえば、人を幸せにすること。人を幸せにする方法はいろいろあるでしょうし、幸せにできる人はたくさんいるのですから。
 でも、人の魔法で幸せにしてもらっても、それは一時的なもので、本当に(日常的/永続的に)幸せになることはできないのでしょう。

 すべての願いが叶えられる魔法を与えられても、賢者は本当に必要なものしか手に入れようとしないのではないかと思います。
 しかも、自分の力で手に入れられるものは、魔法を使わずに、自ら努力すると思います(そのほうが幸せになれますから)。
 そして、本当に必要なものはすべて、魔法を使わなくても、手に入るのではないでしょうか。



   

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