読書日記

  照見

 『般若心経入門』(松原泰道)より、
 照見――それは、照らし見ることであり、照らし見せられている事実にほかならないのです。ここにやすらぎが生まれます。
 あらゆる苦しみから救われる(度一切苦厄)とは、こういうことですが、「一切の苦厄(くるしみ)から度(すく)われる」とは、決して苦しみがなくなることではありません。事実として苦しみがありながら、それが苦しみでなくなるというやすらぎの状態のことなのです。
 不幸な事実から目をそらしていては、余計に悪く思えてくるものです。
 よく見てみれば、事実は明らかになります。そして、事実は事実なのです。それ以下でもそれ以上でもないのです。

 心の中で事実に逆らうと苦しみは強くなります。
 「事実は事実」として受け入れることができれば、苦しみはラクになるのです。
 事実を受け入れられない限り、苦しみは続くのです。
 事実を受け入れられれば、だんだん慣れてきて、やがて「ふつう」になるのです。

 事実を受け入れれば、そこから幸せに向かって努力できるのです。
 事実として悩みや問題があっても(それなりに)幸せに暮らせるようになれたらいいのではないでしょうか。



   

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