生きるヒント 「人と会話するのが苦手」

 「人と会話するのが苦手」だと悩む人がいます。
 会話は人づきあいの扉だと思います。会話などのコミュニケーションを通して、いい人間関係を築いていけるのだと思います。

1.「会話が苦手」の3つのケース
 会話が苦手な人には、おもに3つのケースがあるようです。
(1)会話が続かない
 何を話していいかわからない・話題がない・会話が途切れる・間がもたないなどに気づき、あせってしまい、気まずい雰囲気を感じてしまう。沈黙を怖れてしまう人がいます。話がはずまない・ウケが悪いことを気にしてしまう人もいます。そのために、落ち込んでしまったり、人づきあいをわずらわしく思ったりしてしまうことがあります。

(2)話題が合わない
 人の話題がつまらない・興味がないと思ってしまうことがあります。
 世間話・形だけの会話・無意味な会話などを嫌う人がいます。反対に、まじめな話・相談事などをイヤがる人もいます。
 人の悪口・うわさ話・自慢話ばかりをする人の話を聞くのがイヤだという人もいます。
 人との会話が楽しくない・価値がないなどと考えてしまう人がいます。自分に合わない話題はしたくない、人に話を合わせるのは疲れる・イヤだと考えてしまう人もいます。

(3)人と話すのが怖い
 人と向かい合って話をするとすごく緊張していまう人がいます。ドキドキしたり赤面したりしてすごくあせってしまう人もいます。相手と視線を合わせるのが苦手という人もいます。
 また、相手にどう思われるかが怖くて思うように話せない人がいます。そのために、自分を出せない・心を開けないなどと悩んでしまう人もいます。

 (1)のケースの人には、「会話が途切れてはいけない」「話をはずませたい」「人とうまく会話できないのは欠点だ」というような思いがあるようです。
 (2)のケースの人には、「価値のない会話はムダだ」「深い話ができる相手がほしい」「ムリして人に話を合わせる必要があるのだろうか」などの思いがあるように思います。
 (3)のケースの人には、「人に嫌われたくない」「人によく思われたい」などの思いがあるように思います。

2.心の対策
 会話が苦手でも悩み苦しまないようにするための「心の対策」を書きます。

(1)その場での対策
 会話の最中にイヤな感じがしたりあせったり困ったりした場合の考え方を紹介します。自分なりにアレンジしたり、さらにいろいろ工夫してみるといいと思います。

 話が続かない時、会話が途切れてしまった時には、「こういうこともある(ハオハオ)」「話が続かないのはお互い様(自分ひとりのせいじゃない)」「あせったってしょうがない(逆効果)」「少し力を抜いて話すことを考えよう(できることをすればいい)」「思いつかなかったら、しょうがない(ハオハオ、まぁいいか)」「黙って微笑んでいられたらいいんじゃないか(そうすれば「無口だけどいい人」と思われたり「もしかしたら大物?」と勘違いされるかもしれません)」など。

 話が合わない・つまらない・興味がないと思ってしまった時には、「(人づきあいの中では)こういう話もでてくるもの(ハオハオ)」「(人の悪口・うわさ話・自慢話などをする)こういう人もいる(ハオハオ)」「これも人づきあいのうち」「こういうことに興味があるんだ(人に興味をもつ)」「何がおもしろいんだろうか?(興味の要因を考えてみる)」「人は人、自分は自分(興味や考え方が違っていい)」「聞き流せばいい」など。

 緊張してドキドキしたり顔が赤くなったりしてしまった時には、「あ、また緊張している(私にはこういうクセがある)」「緊張してもいい(悪いことじゃない)」「(初対面とか、意識してしまう相手の場合は)緊張するのは当たり前」「あせったってしょうがない(逆効果)」「今やれることをやればいい(緊張してもそれなりにできる、と思えるようになればいい)」「まぁいいか、なるようになる(今までだって、なるようになったはず)」など。

 このような一言が心の中で言えれば、少しは心が落ちつきます。
 そして、いちばん大事なことは「その場で落ち込まない」ことです。「うまく話せない」「自分はやっぱり会話が苦手だ」「自分はダメだ」などと考えてしまった時には、「あとで考えよう。今できることをしよう。少しでもこの場を愉しめるように心がけよう」などと、今・その場を大切にできるように考えを切り替えることです。多少の違和感があっても、落ち込んでしまうよりはいいのではないでしょうか。

(2)会話以外の場での対策
 うまく会話ができなかったことを想い出して、悩んだり落ち込んだりしてしまった時の考え方を紹介します。
 まずは、方針を決めることです。「会話ベタでもいいんじゃないの」と考えるか、「会話がうまくできるように努力しよう」と考えるかです。

 「会話ベタでもいいんじゃないの」と考えるのなら、「こういうこともある(ハオハオ、まぁいいか)」「こういう時間がある程度あるのはしかたがない」「その時間ちょっとイヤな感じがするだけじゃないか」「黙って聞いていればいいんじゃない?」「私は人見知りで無口だけどいいんじゃないの」「人にどう思われたっていい(どう思うかは相手の勝手、自分は自分)」「ムリして会話に入らなくてもいいんじゃないの」「友達が少なくたっていい」「ひとりの時には人づきあいのことを悩むよりひとりを愉しもう」「自分にはひとりの時間が多いほうがいい」「やりたいことをやろう/夢に向かって前進しよう/愛する人のことだけを考えよう」など。

 「会話がうまくできるように努力しよう」と考えるのなら、「(うまくできなくても)今はまだしょうがない」「(努力すれば)少しずつうまくできるようになる」「それなりに努力しているんだから、あんまり悩むのはよそう」「慣れれば大丈夫」「いい経験(何かヒントがあるかもしれない)」「何か次の対策が見つかったらそれでOK」「いい練習相手」「人づきあいがうまくなる努力をする時と、それ以外の時を分けよう」「今は今を愉しもう」など。

3.現実の対策
 会話が苦手で悩む人の現実の対策は、会話がうまくできるように努力することです。
 そのためにはまず、はっきりした目標をもつことだと思います。「人と会話がある程度できるようになろう」「もっと会話がラクにできるようになろう」「会話がうまくできるように努力しよう」などです。今の自分にあった目標を設定することも大事です。
 中途半端な気もちでただ会話に参加しても、思うようにいかずにすぐに落ち込んでしまうことが多いのではないでしょうか。
 会話上手になるためにはそれなりの努力が必要だし、それなりの時間もかかる(それまでは多少の我慢も必要)ということを覚悟したほうがいいと思います。
 もう1つ「自分を育てる」という人生目標をもったほうがいいと思います。その中の1つとして、「会話ができるようになる」という目標があるということです。「自分を育てる」ということは「幸せになる能力を向上させる」ということです。つまり、「幸せになるために」という目的を忘れなければ、努力もできるのではないかと思うのです。
 会話上手になる努力には、大きく分けて工夫・勉強と実践があると思います。

(1)工夫・勉強
 ただ何も考えずに、もしくは「うまく会話ができるように頑張ろう」とだけ考えて、会話に参加しても、進歩はしないし、前と同じことの繰り返しになると思います。
 それなりの工夫や勉強をしたほうがいいのです。たとえば、
話題の考え方を工夫する
・自分の得意パターンを1つ1つ増やしていく
会話の展開を考える
聞き上手を目指す。相づちなどのリアクションを身につける
・会話をしたい相手が興味のあることについての情報・知識を得る
・流行を知る
・一般的な知識を養う
・自分の考えを人にわかりやすく伝える練習として、文章を書く
・人と会話する前に、話題を考えておいたり、メンタルリハーサルをしてみる
 もっといろいろあると思います。自分なりに工夫してみることが大事だと思います。

(2)実践
 「苦手だから」「うまくできないから」「イヤな気もちになるから」などと会話をしなければ、いつまでたっても会話ができるようにはなりません。たとえ会話のための勉強をいっぱいしても実践しなければ上達はしません。
 また、すぐにうまくなることはできません。実践しながら工夫を重ねていくことが上達への近道です。それでも、実際には少しずつ進歩するものだと思います。
 まずは、会話に参加することです。そのためにすることは、話したい人に自分から話しかけたり、参加したい人たちの輪の中に入っていくことです。慣れないうちはドキドキして、勇気もいると思いますが、自分を育てるためです。ポイントは迷わずに入っていくことのような気がします。タイミングとかあれこれ考えずに、自分から近寄って行けば「なるようになる」と思います。気のきいた言葉なんていりません。ふつうのあいさつだけでも、目があったらおじぎをするだけでもいいと思います。
 あとは会話に参加するだけです。とりあえずは聞き手に回ればいいでしょう。人が話している最中には、自分が次に何を話そうかと考えるのではなく、相手の話に耳を傾けるようにしたほうがいいのです。話すことが自然に頭に浮かんでそのタイミングがあったら発言すればいいでしょう。
 うまく話そう、多く話そう、人を笑わそうなどと考えないほうがいいと思います。そういうことは、ある程度余裕ができてからでいいでしょう。うまく話そうなどと意識しすぎると、それができないと落ち込んでしまいます。まずは会話に参加することが重要です。相手の話をよく聞くということは、立派に会話に参加しているのです。
 あとは慣れの問題だと思います。会話への慣れ、相手への慣れなどです。慣れてくれば気もちがラクになり、少しは余裕ができて、いろいろ考えられるようになり、発言もできるようになると思います。
 そして実践後に大事なことは、少しでもうまくできたら、少しでも進歩したら喜ぶことです。うまくできないことがあっても落ち込まないことです。あせらずに少しずつできるようになればいいのです。

 会話の努力の前にもう1つ大切なことは、「興味・関心をもつ」ことではないかと思います。話題に興味をもつ、相手に興味をもつ、社会(ふたりの関係/グループ/地域/国/世界)に興味・関心をもつ、人間という生きものとその幸せに興味をもつ、などです。
 どのくらい興味がもてるかが、会話(の努力)にも影響するような気がします。

 ここまで読んでくる中で、「そんな努力が必要なのか?」「そこまで努力をしなくちゃいけないのか?」と思ってしまった人もいるのではないかと思います。
 そこは、「会話ベタでもいいんじゃないの」と考えるか、「会話がうまくできるように努力しよう」と考えるか、それぞれの人の判断です。どちらでもいいと思います。(「会話の価値」も参考になるかもしれません)
 「会話がうまくできるようになりたい」と思うのなら、それなりの努力をしたほうがいいということです。
 ある程度努力して、「このぐらいできればいいんじやないの」と考えてもいいし、「さらに上手になろう」と考えてもいいと思います。努力をする時期と意識しない時期を分けて、努力する時期が何度かあってもいいと思います。

 本来なら会話を愉しめるのがいちばんいいと思うのですが、苦手意識があるうちは難しいし、ある程度会話がラクにできるようになってからだと思います。また、いろんな相手と様々な状況でつきあうこともあるので、緊張したり気を遣ったりしながらでもそれなりに会話ができたほうがいいのではないでしょうか。
 自分に合う人が見つかり、関係が深まれば、会話を愉しめるようになれるのです。そこまでの努力はけしてムダではないと思います。少なからず、自分を育てることができると思います。


幸せのホームページ 悩みのヒント