将来への不安でくよくよしない考え方
将来のことを考えて、不安になることは誰にでもあると思います。
うまくいかないのではないか、悪い事が起こるのではないか、大変なのではないか、・・・悪い状況になったらどうしよう、困る、イヤだなどと考えてしまいます。
将来のことを考えるのはいいことですが、心配しすぎて不安な気もちが強くなったり長くなってしまうのはよくないでしょう。
それに、実際には悪いことにならないかもしれないのです(心配性の人はそういうことが多いでしょう)。そういう場合、心配してくよくよしただけ丸損になってしまいます。
まだ先のわからない将来のために、今を不安な気もちで長い時間過ごしてしまうのはもったいないのではないでしょうか。
36「なるようになる」〜不安への心の対策〜
37「その時はその時」〜悪い状況を覚悟する〜
38「不安は注意信号」〜自分にとって“いい予感”〜
39「将来のため?」〜“○○したら”の生き方〜
40「将来自分を支えてくれるもの」〜漠然とした不安〜
41「将来の自分は今の自分から」〜将来を愉しむためには〜
42「○○たらいいな。どうしたら?」〜軽やかに、着実に〜
43「明日があるさ」〜希望の匂いがする楽天的考え方〜
不安な気もちになるのは、自分が不安になるような考え方をしているからです。自分が将来の悪いことを考えるから、不安な気もちになるのでしょう。
と言っても、それは無意識に考えてしまうのでしょうから、しかたがありません。不安な気もちに早めに気づいて、考え方を変えることができればいいのです。
不安な気もちになった時に、「心に不安を生み出しているのは自分の考え」ということを思い出せれば、くよくよないための幸せになる考え方を心がけることができるのではないでしょうか。
36 「なるようになる」〜不安への心の対策〜
将来への不安でくよくよしないために役に立つのが「なるようになる」という簡単な考え方です。でも、心配性の人には「なるようになる」の一言がなかなか言えないのです。その一言だけでラクになれるのに。
今後の人生、老後、将来になるかもしれない病気、死など、人を不安にすることはたくさんあります。また、これからのことで悪い状況になるのではないかと心配してしまうこともあります。そういう将来の不安や心配をくよくよと考えてしまい、暗い気分で過ごしてしまうことがあります。
不安や心配について考えて悩ましくなった時には、「なるようになる」と(心の中で)言うことで、少し安心できるとともに考えを違うほうへ向けるきっかけにできます。
私は元来、先のことを心配しやすいタイプです。かつては先のことでくよくよすることも多かったのですが、「なるようになる」という考え方が定着してからは、ずいぶんとラクになったと実感しています。今は「なるようになる」が口グセのようになっています。
将来の不安や心配への対策は大きく分けて二つあります。
一つは、不安や心配に備えること。将来懸念される状況にならないように手を打ったり、そうなった時に役立つものを用意しておくことです。
もう一つは、不安を小さくすること。不安を感じてもそれを大きくしないで、自分の中で小さくして気にならないようにすることです。
前者は現実問題としての対策で、後者は心の問題としての対策です。
現実問題に対策することで心の問題、つまり不安を解消するというのが一般的な方法です。それでも、くよくよしやすい人の中にはできる限りの備えをしても不安がなくならないという人がいます。また、現実問題としての対策をしようがない場合もあります。そういう人やそういう場合には、「なるようになる」と心の対策をしてみてはいかがでしょうか。
37 「その時はその時」〜悪い状況を覚悟する〜
将来の事で、悪い状況を想像してくよくよしてしまうことがあります。うまくいかないのではないか、悪い事が起こるのではないか、大変なのではないか、・・・悪い状況になったらどうしよう、困る、イヤだなどと考えてしまいます。
そんな時には、「その時はその時」と悪い状況を覚悟すれば、必要以上に悪い状況を恐れなくてすみます。
悪い状況になるかどうかはわかりません。やってみなければわからない、その時になってみなければわからないことがあります。うまくいく可能性があると思えるから悩むのでしょう。「案ずるより生むが易し」のことわざのように、やってみればたいして問題はなかったということがよくあります。くよくよしただけ損、ということになります。
一生懸命に考えてやれるだけやろうと思っているのなら、あとはうまくいくことを期待したほうがいいのです。それでもうまくいかない時には、「その時はその時」です。実際にその時になってから、苦しんで努力すればいいのです。今そんなに苦しむことはないのではないでしょうか。
「その時はその時」という覚悟には、悪い状況になってもその時のベストをつくそうという決意も含まれています。また、その時にベストをつくす自分を信じられれば覚悟しやすいでしょう。
悪い状況になっても、苦しむのは「一時の事」がほとんどだし、心がけしだいでは「いい経験」にもできるはずです。そして結局は「なるようになる」のです。悪い状況ももう少し長い目で見れば、それほど恐れることではないと思えるのではないでしょうか。
もし、自分が考えている最悪の状況を、「その時はその時」と受け入れることができれば、もうくよくよしなくてすむのです。
「その時はその時」と、将来のことは将来の自分にまかせて、今の自分は今を大切にしてくよくよしないほうがいいのではないでしょうか。
38 「不安は注意信号」〜自分にとって“いい予感”〜
将来のことを不安に感じてくよくよしてしまうことがあります。あれこれと心配して悩ましい思いをしてしまいます。
「不安」自体はけして悪いものではありません。「不安」に対して、過剰に恐れたり、余計な心配をし過ぎてしまうのがよくないのです。
「不安」についてのくよくよしない考え方をいくつか紹介します。
「不安は悪いことを避けるための注意信号」。不安を感じることは、将来の悪い出来事や危険を察知したことを自分に知らせる注意信号です。不安を感じたら、その対策を考えるきっかけにすればいいのです。不安の対象について、対策を考え、今できることがあればする。それだけで終わりにすればいいのです。中には、今は何もできないこともあります。そんな時には、「しょうがない」「その時はその時」「なるようになる」などの割り切った考え方も必要だと思います。
「心に不安を生み出しているのは自分」。不安を感じた時には、このことを思い出してみてください。自分がそのことを考えなければ不安は起きないのです。今考えているそのことを考えるのをやめれば、不安も自然に消えていきます。また不安になるのは、イヤなことがあった後や落ち込んでいる時や疲れている時などが多いのではないでしょうか。そういう時の自分の考えや感情は信じないほうがいいのです。疲れているから、あの事があったから、この問題があるから・・・今は、こんなふうに考えてしまうんだ、不安や憂うつになっているんだのように考えられたら、と思います。
「不安を感じた時がいいきっかけ」。不安になるのはだいだい時間に余裕がある時です。ふとした時間のすきまかもしれません。そこで、「不安を感じたら、何かいいことを始めよう」(1章参照)と考えればいいわけです。それが不安への対策を考えることであってもいいし、気分がよくなれるような何かを始めることでもいいでしょう。
不安があるから、それに駆り立てられて勤勉でいられるという側面もあるのではないでしょうか。誰だって本当は怠けたいのです。遊んで暮らしたいでしょう。将来への不安や心配がなければ。
将来の不安があるから、人間らしい生活ができるのかもしれません。
不安を恐れてくよくよするのではなく、将来のためにいいことをするきっかけにできれば、不安は自分にとってはいい予感ということになるのではないでしょうか。
39 「将来のため?」〜“○○したら”の生き方〜
おとなになったら、入学試験に受かったら、いい会社に入ったら、恋人ができたら、結婚したら、マイホームを買ったら、成功したら、夢が叶ったら、歳をとったら、・・・。
「○○したら」というのには「○○するまでは我慢」というようなニュアンスが感じられます。
「○○したら」という生き方をする人は、一つを達成してもまたすぐに次の「○○したら」を設定するのではないでしょうか。いつになったら「○○したら」の次に続く言葉につながる(総じて言えば、幸せになれる)のでしょうか。
またもし、「○○しなかったら」どうなるのでしょうか。夢や目標は達成できないこともあるというのは当たり前のことですが、「○○したら」だけで生きてきた人にとっては絶望的かもしれません。
将来(たとえば、夢の実現や目標の達成)のために今を大切にすることはいいことです。でもそのために今をつらいだけで我慢しなくてはならないとしたら問題があるのではないでしょうか。将来のためだけに今を生きている、というのはどうかと思うのです。
夢や目標を持って生きることはいいことです。私は、夢や目標を持って生きている今の幸せを重視し、実現へ向かう過程を愉しむことが大切だと考えています。結果よりも過程を大切にしたいと思います。でも、過程を愉しめることが実現につながるいい方法だとも思っています。
また、夢や目標に向かって夢中になっている人には、「くよくよしているヒマはない」のです。そんな時間があったら、夢や目標の達成に向けてやることがあるはずです。
「○○したら」がすべてではなく、その努力の過程を愉しむことと、それ以外の生活の中で愉しむことを忘れてはいけないと思うのです。
「今」より「将来」を大切にする人は、その「将来」になってもそのまた「将来」のために時間を使ってしまうのではないでしょうか。
「今」を大切にできるようになれれば、「将来」もその「今」を大切にできます。「今を大切にできるようになる」というのは「将来」のためでもあるのです。
40 「将来自分を支えてくれるもの」〜漠然とした不安〜
将来への不安を考えたらキリがありません。将来に対する漠然とした不安のようなものもあります。そんな将来に自分を支えてくれるものは何でしょうか?
まず考えられるのは「お金」でしょうか。お金があれば生活には困らないし、何か問題があってもお金を使えば十分な対策を施すことができる場合が多いでしょう。だから多くの人は若いときから貯金をしたりして将来に備えます。「お金」を得るという意味で、「仕事ができればいい」「死ぬ直前まで働けたらいい」と考える人もいます。
次に考えられるのが「健康」ではないでしょうか。「健康が何より」「健康だからいろんなことができて生活を愉しむことができる」「健康なら働くこともできる」などと考える人は多いでしょう。健康ブームのようなものもあり、健康に気を使って生活している人が増えているような気がします。
いちばん頼りになるのは「人」かもしれません。人はひとりでは生きていけません。歳をとると人の助けを借りることも出てきます。「人」は心の支えにもなります。何か問題が起きた時、いざという時に様々な形で助けてくれるのは「人」でしょう。そういう意味で、「大切なのは家族/友達」「人間関係が大切」と考える人は多いでしょう。
お金・仕事や健康や人間関係を大切にすることはいいことです。でも、健康や人間関係に気を使い過ぎたり、お金に執着し過ぎたり、仕事をやり過ぎたりするのはよくありません。その「過ぎ」の判断は難しいところですが、そのためにすごく苦しんだり疲れ切ってしまったり、生活をぜんぜん愉しめなくなってしまうようでは問題があるのではないでしょうか。
最後に、自分を支えるものとして「自分」を挙げたいと思います。自分の人間性とか、心の成熟度とかいうことです。将来に何か問題が発生しても、その時々にうまく対処できれば困らなくてすむわけです。また、「自分に自信がない」というのが将へ来の不安につながっていることも多いのではないでしょうか。
何かあっても平然と対処できる自分になる、そのために「自分を育てる」ということを、将来への備えとして考えてみてはどうかということです。「自分を育てる」ことについては7章に書きました。
少しずつでも自分が成長できているという実感が持てれば、将来に対する不安は小さくなります。「なるようになる」とも心から思えるようになります。今の自分は信じられなくても将来の自分を信じてあげればいいのではないでしょうか。
41 「将来の自分は今の自分から」〜将来を愉しむためには〜
将来の自分は今の自分から続いています。今の生活が将来の生活につながっているのです。
将来のために(お金や健康や人間関係などの)備えを今しているのなら、その分安心していいわけです。「備えあれば憂いなし」ということですか。
自分の夢に向って今努力しているのなら、将来に夢が叶う可能性を胸にイキイキと生きられるわけです。
今の生活を愉しめる人は、将来も生活を愉しめると思えるでしょう。
生活を愉しめるようになるために今努力している人は、将来には今よりも生活を愉しめるようになると思えるでしょう。少しずつでも進歩していると自覚している人はなおさらです。
現在の生活実感を基点にその方向性によって、将来の生活が展望できるのだと思うのです。今がある程度幸せで少しずつ幸せになりつつあるという実感があれば、自分の将来の幸せを信じることができるのではないでしょうか。
将来のための備えを今していても今を愉しめない人は、「いつまで頑張ればいいのだろう」「いつになったらラクになれるのだろう」などと感じてしまうのではないでしょうか。「もしかしたら一生このまま走り続けなければならないのかもしれない」という不安が心の中にあるかもしれません。
将来のために今できることをすることと、将来のために今を愉しめるようにすることの両方の努力をすることが、漠然とした将来の不安でくよくよしない根本的な方法ではないかと思うのです。
でなければ、単に楽観的に「なるようになる」「その時はその時」などと言えるようになるか、だと思うのです。
いずれにしても、将来の自分は今の自分からしかつながっていないのです。
42 「○○たらいいな。どうしたら?」〜軽やかに、着実に〜
私はよく「○○たらいいな」と(心の中で)言います。「うまくいったらいいな」「夢が叶ったらいいな」「いい出会いがあったらいいな」「あの人と親しくなれたらいいな」「人の役に立てたらいいな」「もう少し(人間として)成長できたらいいな」・・・。
これらは自分の願いや目標を言葉にしたものですが、少し軽い言い方になっています。次のようなメリットがあります。
・軽い気もちで考える/始める/行動することができる。
・可能性が薄いことでも、希望を残すことができる。
・うまくいっていなくても、もしくは、あきらめることになっても、それほど落ち込まなくてすむ。
「○○したい」「○○しなければ」では、少しプレッシャーが感じられます。
「軽い気もちでやってみよう。もしかしたらうまくいくかもしれないよ」という感じで「○○たらいいな」と言うことで、少し明るい気もちになれます。
私は、「○○たらいいな」に続けて、「では、どうしたら?」と考えるように心がけています。
将来に不安を感じたり先のことで余計な心配をするよりも、「○○たらいいな。どうしたら?」と考え、今できることをやればいいのです。日々の積み重ねが○○(目標達成)につながっていくのだと思います。
夢や目標がある人は、「達成できたらいいな。では、どうしたら?」と思い続ければいいのです。
この考え方の応用を紹介します。
生活の中で問題が生じた時に、まず「自分はどうしたいのか?」と考えます。それがわかったら、「○○たらいいな。では、どうしたら?」と考えることで問題にうまく対処できることがよくあります。
ただ「困った」「どうしよう」などと頭を抱えていても悩ましいだけです。まず自分がどうしたいかを明確にし、そのための方法を考えるという単純な考え方なのですが、実生活の中で役に立つ考え方だと実感しています。よろしかったら、試してみてください。
大切なのは「○○たらいいな」と自分の望みや目標を明確にして、「どうしたら?」とその方法を考え続け、少しずつでも前進し続けることです。それが今をイキイキと生活し、明るい将来にもつながっていく方法だと思うのです。
43 「明日があるさ」〜希望の匂いがする楽天的考え方〜
「明日(あした)があるさ」
この言葉は、なんかいい感じがします。希望の匂いがします。今はしょうがない、と現実を受け入れる意味も含まれているような気がします。将来への不安でくよくよしそうな時にも「明日があるさ」と言うだけで、肩の力が抜けてラクになれることもありそうです。
「明日があるさ」には、「(明日もあるから)今日はいいんじゃないの」のような使い方があります。「明日があるさ。だから、今日はこれ以上△△する(悩む/考える/やる/頑張る・・・)のはやめよう」とか、「今日は××だった(できなかった、うまくいかなかった、ミスをしてしまった・・・)けど、(こういう時もある/まぁいいか)明日があるさ」みたいな。
「明日があるさ」には、「つらいことがずっと続くことはない」のような意味が含まれています。だから、つらい時にも「明日があるさ」と思えれば、ちょっと救われる気がするのではないでしょうか。「どんなにつらいこともずっと続くことはない」「朝の来ない夜はない」というのは正しい見通しだと思います。反対に、「もうダメだ」「もう立ち直れない」などと思ってしまうのは良くない見通しです。ふと、そんなふうに思ってしまうことがあっても、「そんなことはない。明日があるさ」と思い直すことができればいいのですが。
明日のために「今何かをする」ということが大事なんだと思います。明るい将来のために、何かをやっているから/探し続けているから/努力しているから/頑張っているから、だから「明日があるさ」と言えるということもあるのではないでしょうか。
イヤな事・つらい事があってこれからの明るい見通しができなくなり、くよくよしない考え方がなかなかできないような時には、「明日があるさ」と楽天的に考えてしまっていいこともあると思うのです。少なくとも(明るい将来の)可能性は誰にでもあるのですから。
くよくよ考えるのと楽天的に考えるのと、どちらが将来にとっていいのでしょうか?
少なくとも今にとってはどちらがいいかは明らかです。意識して楽天的に考える努力をしてもいいのではないでしょうか。