心の傷が痛むのは


 不幸な出来事に遭って、つらい思いが長く続いてしまうことがあります。
 そのことを、不幸な出来事で負ってしまった“心の傷”が痛むことだとして考えてみましょう。

 まだふさがっていない傷口をつっついたりいじったりしてしまったら、痛いだけではなく、傷の状態を悪くしてしまったり傷口を広げてしまうこともあります。
 心の傷の場合には、気づかずにそれをしてしまうことが多いように思います。
 体の傷だったら、ふと傷口をいじってしまっても痛みがあればやめます。心の傷でも同じはずです。
 でも心の傷の場合には、痛いのはその傷をつくった原因のせいだとばかり考えて、自分がいじっているせいだと気づけない人が多いようです。
 心の傷口が痛いのは「自分がいじっているから」と気づければ、いじるのをやめることができます。

 不幸な出来事があってからある程度時間がたっても心に傷が残っているという場合、それは傷痕だと思います。傷痕と言っても疼くことはあります。でも痛むのは自分でつっついているからではないでしょうか。

 不幸な出来事を無意識に想い出してしまうのは、傷痕が疼いているのでしょう。それはしかたがありません。
 その後に、傷を負ってしまった時のことを詳細に想い返したり、その原因などについてあれこれと悪く考えてしまうことが、心の傷痕を自らつっついていることになるのです。
 自分の心に傷をつくってしまった原因は不幸な出来事です。それを引き起こした相手がいるなら、その人が原因と考えられます。
 でもそのことを自分がしつこく悪く考えなければそれほど心が痛むことはないはずです。

 過去の不幸な出来事について考えて心に痛みを感じた時には、「心の傷が痛むのは、自分がつっついているから」と考え、つっつく(その事を考える)のをやめればいいのです。自分で自分に苦痛を与えることがないように。


   

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