むかし、むかし、ある村に、「自分の幸せを紙に書いてきたら、その数だけ銭をやろう。ただし、ウソをついてはいけないよ」と言うヘンなおじさんが現れました。村人はこぞってそのおじさんの所に押しかけました。みんな、50個以上、多い人は300個も自分の幸せを紙に書いて持って行きました。幸せに気づいたとしても、それを幸せに感じられるかどうかはわかりません。たとえば、「生きているだけで幸せなんだよ」と教えられても、それを幸せに思える人は少ないでしょう。
ヘンなおじさんは、村人を一人ずつ呼び、紙に書いたその人の幸せを本人に確認しながら銭を渡しました。
「お前は、この幸せを感じたことが本当にあるのだな?」
「はい」と答えた場合、「お前は今、ウソをついたな。私は神様だからわかるのだ」と言われることが多く、「いいえ」と答えた場合には、「お前はウソを書いたのだな」と言われ、みんな銭は少ししかもらえませんでした。
そんな中、一人だけ書いた数だけ銭をもらった村人がいました。その村人は正直に、いくつかの幸せには「はい」と答え、その他のたくさんの幸せには「いいえ」と答えました。「いいえ」の答えに対して、神様が「お前はウソを書いたのだな」と言うと、その村人は「ウソではございません。この自分の幸せにはきょう考えてみてはじめて気づいたのです。これから幸せを感じられるように努力するつもりです。おじさん、ありがとうございました」と答えると、神様はその村人に銭をくれたのでした。
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