読書日記
旅人たちと熊
『イソップ寓話集』より、
二人の友人が同じ道を歩いていました。すると突然熊が彼らの前に現れましたので、一方の方は急いで或る木にのぼって、そこに隠れていましたが、他の一人は、捕まりそうになりましたから、地面に倒れて死んだふりをしていました。熊は彼に鼻を近づけて嗅ぎまわりましたので、彼は我慢して息をはかずにいました。というのはその動物は死体には触れないということですから。
しかし熊が立ち去ると、木から下りて来た男は彼に、熊が耳もとで何を言ったかと尋ねました。と、彼は言いました。「今後、危険の際に傍にいてくれないような友人と一緒に旅をするなって。」
友が自分を見捨てたと思い、怒る気もちはわかりますが、自分も友も助かったのだから、そのことを素直に喜んだほうがいいのではないでしょうか。
それにもし、逆の立場だったら、熊に襲われそうな友を自分は助けに行けたでしょうか?
助けに行って助かるものならそれがいいのでしょうが、二人ともがやられてしまうのが最悪の結果です。
誰でも自分が一番大切です。このような非常事態に自分を守ることを最優先するのはしかたがないでしょう。
もちろん、自分が心から愛する人と一緒の場合に、絶対に自分だけ逃げられない、相手を守るためにできる限り闘う、それで斃れてもいいと思ったのなら、それを止めることはできないのでしょう。
もし、自分が逃げて、友が熊に襲われたとしても、自分をあまり責めないことです。しかたがないのです。
たとえ自分がやられたとしても、その間に友が逃げてくれればいい、と考えられる人もいると思います。真の友なら、なおさらです。
友の分まで、これからの自分の人生を大切に生きることが大事なのではないでしょうか。真の友なら、それを願っているはずです。