読書日記

  夫婦は直角がいい

 『養老訓』(養老孟司)より、
 夫婦は直角に向かい合うのが正しい、と私はいつも言っているのです。
 直角はなぜいいか。夫婦は二人で暮らすのだから、外から見ると、必ず合力になります。二つのベクトルが直角になっているときに、力はいちばん大きくなります。
 いちばん無駄なのは、お互いが向いている方向が正反対なときです。
 まったく同じ向きはどうでしょう。これは良いようで、そうでもない。実は長いほうで済んでしまう。力はなかなか足せないので、長いほうだけあればいい。
 夫婦に限らず、人間が共同して作業するときはできるだけ直角になるようにするといい。
 真正面で向き合って愛の交換ができたら理想的でしょう。
 でも実際には、不満などから相手を攻撃(口撃?)してしまうことも多いでしょう。その場合、正面で向き合っているよりも、直角に向き合っていたほうが攻撃を逸らしやすいのでしょう。

 愛憎は内に向かう力ですが、家庭外に向かう力もあります。たとえば、仕事や人づきあいや様々な社会活動などです。夢や目標も含めていいと思います。
 これらの方向が正反対では、合力・協力はできないでしょう。

 まったく同じ方向で合力できたら理想的でしょうが、そういう組み合わせ(たとえば、キュリー夫妻)はめったにないでしょう。一方の力が大きい場合には、他方が応援する・支えるという関係は美しいと思います。ただしその場合、他方は自分(の望み)を犠牲にしなくてはなりません。

 一般的には、相手の外への活動は見守りつつ、自分は自分の活動を優先するのがふつうでしょう。これも直角に向かい合うことになるのではないかと思います。

  『愛する――それはお互いに見つめ合うことではなく、
   いっしょに同じ方向を見つめることである』 サン・テグジュペリ

 互いにある程度同じ方向性(望み)をもち、でも違う方向性もそれぞれに発揮できたらいいのではないでしょうか。



   

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