読書日記
「私」を引く生き方
PHP9月号の『今を生きる――わたしの見方・考え方』は、
菊池信義さん(装丁家)。
人間は関係性の中でしか生きることができない。そこで、自と他がぶつかり合い、新たな自や他が生まれる。それが生きるということだと。
しかし、現実は、そううまくはいかぬ。関係性を縁どるものが常に先行しているから、どちらかに妥協や屈服が生じてしまう。
私は「私」というものを引いて、「他」を生きようと心がけてきた。
なぜなら、「他」を知るのも、作品のイメージを読み取るのも、まぎれもなく「私」でしかない。
職場にしても、家庭にしても、人間はまわりの人との関係性の中で生きています。
そこでは、すべてが自分の思い通りになるわけではありません。双方の合意の上にいくこともあるでしょうし、相手が自分(の考え・やり方など)に合わせてくれることも、自分が相手に合わせることもあるでしょう。
他人との出会いやふれあいの中で、わかる自分、変わる自分、生まれる自分のようなものもあるでしょう。
人と意見交換したり、競い合ったり、刺激し合えることもあります。
他人と関わることで、自分の可能性を広げることができる、と考えられるといいのかもしれません。
ただし、何かを人と共に築いていくためには、ぶつかり合うこともあるでしょう。それがいいものを生むこともありますが、関係が悪化し、悪い結果に結びついてしまうこともあります。
誰かが妥協や屈服することになってしまうこともあるでしょう。
「自分は絶対に妥協したくない・屈服しない」と思っていたら、人間関係は難しいものになるでしょう。
「これだけ」は譲りたくないというものは除いて、人に従ってみるのもいいのではないかと思えたほうがラクでしょう。また、新たな可能性も生まれるのではないでしょうか。
そのためには、「もしかしたら相手の言うほうがいいのかもしれない」「そういうの(考え方・やり方など)も有りかな」「試してみる価値はあるかもしれない」などと考えられるいいのかもしれません。
“「私」を引いて「他」を生きる”というのは、自分をなくすのではなく、新たなものを他から自分に加える、と考えられるといいのでしょう。
新たなものを試し、取捨選択していくことで、自分を進歩させていくことができればいいのではないでしょうか。