9章 大きい悩み・問題に対するくよくよしない考え方

 
 『くよくよしない考え方』(本多時生)  目次 

 1章 小さいことでくよくよしないために
 2章 人のことでイライラしないために
 3章 決断で迷ってくよくよしないために
 4章 過ぎたことでくよくよしないために
 5章 まだ先のことでくよくよしないために
 6章 人間関係でくよくよしないために
 7章 自分のことでくよくよしないために
 8章 生きることでくよくよしないために
 9章 大きい悩み・問題に対するくよくよしない考え方
 10章 くよくよしない考え方ができない、とくよくよしないために


73 「四つの課題」〜悩みや問題を抱えてしまった時には〜

 悩みや問題を抱えてしまった時には、次の「四つの課題がある」と考えてみてください。これらがこの章のテーマです。

 一つめは、「問題解決」です。ふつうは問題解決だけを目指して考えると思います。すぐに解決できる問題ならいいのですが、すぐには解決できない問題も、今の自分には解決できない問題もあります。そういう問題を抱えてしまった時に、問題解決だけを考えると答えが見つからずに、くよくよすることになってしまうのです。重大な問題の解決・解消には時間がかかることが多いのです。その期間をできるだけ悩み苦しまないように心がけながら、問題にうまく対処していくことが重要です。そのために役立つのが以下の三つの課題を意識することなのです。

 二つめは、「イヤな気もちで考えない」です。なかなか解決できない問題を考え続けると悩ましくなります。気分が悪くなり、悪い考えをしがちになってしまいます。そんな時には、悪い気分に流されて悪い考えをしないように注意しなければなりません。うまく気分転換ができればいいでしょう。
 三つめは、「それなりの生活」を心がけることです。悩みや問題を抱えていても、生活全体を台無しにしてはいけないということです。そのためには、その問題について考えない時間の過ごし方が大事です。安らかな時間、愉しめる時間などを大切にすることが重要です。
 四つめは、「問題で苦しまない自分になる」ことです。人生という長い目で見て、抱えている問題の解決よりも、問題に対して苦しまない自分、くよくよしない自分になることを心がけることです。そうすることが、問題に対する積極的な姿勢を生み、問題解決にもいい影響を与えると思うのです。

 悩みや問題を抱えた時、問題解決だけでなく、他の三つの課題があることを思い出して、自分の生活の中でうまく問題に対処し、それなりに生活を愉しみながら、いい経験として自分を育てることができたら、と思います。



74 「正しさよりも自分の気もちが大切」〜理想より現実〜

 この本の中ではくよくよしない考え方として、「まぁいいか」「あとで考えよう」「なるようになる」「そのままでもいいよ」などを挙げました。これらは“いいかげん”な感じがするかもしれません。
 でも、くよくよしない考え方としては正しさよりも自分の気もちを大切にしたほうがいいのです。いくら正しい考え方でも、その時の自分に合った現実的なものでなければ役に立ちません。正しい考え方が、かえって自分を苦しめてしまうこともあるのです。

 自分ではどうしようもないことがあります。自分にはできないこと、変えようのないこと、人のこと、社会のこと・・・。理想としてはできたほうがいい、他の(力のある)人ならできるかもしれないが、今の自分には無理なことを要求しても、ただつらい思いをするだけです。すぐにはできないことを今の自分に求めるのも同様です。そのようなことは、「(すぐには)できなくたっていいじゃないか」「そのままでもいいじゃないか」などと考えてしまったほうがいいのです。
 人には得手不得手があります。苦手な事があり、苦手な人もいます。苦手な事をうまくやることや、苦手な人とうまくつきあうことは、本人には難しく、大変なことです。それを苦労して頑張るのもいいことですが、「これはうまくできなくたっていいじゃないか」「この人とはそれなりにつきあいばいい」「少しくらいイヤな思いをすることがあってもいい。無理をすることはない」などと考えてしまってもいいことがあると思うのです。
 また、一年たったら忘れてしまうような「小さいこと」だったら、どうでもいいのではないでしょうか。それが必ずしも、正しくなくても、立派でなくても、要領が悪くても、矛盾があっても、その場しのぎでも、・・・どうせすぐに忘れてしまうのですから。

 完璧主義の人は少しでも問題があると、理想的な解決を求めてしまいます。すぐに解決できないとイライラしたりくよくよしたりしてしまいます。自分の中で問題化してしまうから、“イライラ”“くよくよ”の悪循環に陥ってしまうのです。「まぁいいか」「このままでいいか」のように問題化しなければ、悪循環に入ることもないのです。

 現実として今の自分には無理な考え方や方法は、いくら正しくても自分を苦しめるだけです。それが簡単にできるくらいなら、くよくよなんかしません。
 今の自分にできる考え方でなければ役には立たないのです。「まぁいいか」「そのままでもいいよ」という簡単な考え方でも、その場で自分ができれば少しはラクになれるのです。“くよくよ”から脱出するきっかけにはなるのです。
 今の自分(の気もち)を大切に、場合によっては“いい加減”な考え方を選択できるようになることも、人間としての成長だと思うのです。



75 「現実は現実。○○たらいいな。どうしたら?

 イヤなことがあった時、不満や怒りなどのイヤな気もちになるだけで終わらさずに、現実は現実として受け入れた上で、自分がどうしたいかをはっきりさせ、そのためにはどうしたらいいかを考えるというのが、「現実は現実。○○たらいいな。どうしたら?」という考え方です。
 イヤなことがあってイライラしたり怒ったり、誰かや何かのせいにしたり、不満に思ったりグチを言ったり、不遇な環境や不運を嘆いたり、うまくいかないことに自分を責めたり落ち込んだり、・・・。それだけで終わらせてしまっていたら、イヤな気分になるだけで、いつまでも同じことの繰り返しになってしまいます。
 小さいことやどうでもいいことなら「まぁいいか」などと軽く済ませてしまえばいいのですが、自分にとって重要なことや対策が可能なことは、「どうしたらいいか」を考えたほうがいいのです。

 この本の中に書いてきた、「こういうこともある」「しょうがない」「こんな人もいる」「世の中にはイヤな人もいる」「私には、こういう時にイヤな気もちになるクセがある」「今はまだできない」「うまくできないこともある」「今はわからない」「今はつらくてもしかたない」などは、すべて「現実は現実」ということなのです。
「現実は現実」と受け入れることで、次の考えがしやすくなります。さらに、「○○たらいいな。どうしたら?」(5章参照)と続ければいいのです。
 どうしたら、問題が解決できるか。どうしたら、うまくいくか。どうしたら、少しでもラクになれるか。どうしたら、いい気分になれるか。どうしたら、やりたいことができるか。どうしたら、幸せになれるか・・・。「どうしたら?」と考えることが大切なのです。

 要は、“心の姿勢”だと思います。
 ちゃんと足元を確認した上で、顔を上げて目標を見ながら、一歩一歩前進していく。こういう姿勢が大事なのだと思います。足元を見ないのも、目標を見ないのも、前進しないのも、それぞれ問題があります。
 私は「現実は現実。○○たらいいな。どうしたら?」という考え方が身についてから、小さい問題の解決が早くなり、大きい問題も前向きに考えられるようになったと実感しています。単純な考え方ですが役に立つことが多いのです。単純だから覚えやすいし、容易にできるということもあると思うのです。「シンプル・イズ・ベスト」という言葉もあります。



76 「一つ一つ考える」〜問題を整理して考える〜

 新聞などの人生相談を読んでいると、いろいろな問題を次から次へと書き連ねていることがよくあります。たとえば、次のようなものです。
「仕事の内容と人間関係が合わずに、会社を辞めました。親は昔から、私が傷つくことばかり言います。友達もいません。夢も希望もなく、誰にも愛されていないと思うとたまらなくなります」
 これは極端な例ですが、このように問題をどんどんつけ足して考えたら、答えは見つからないし、気分は落ち込むばかりです。

 現実的には、一つ一つの問題を別々に考えることが必要です。
 まずは今いちばん問題なのは何かをはっきりさせ、その一つに取り組むことです。
 緊急性のある問題の場合には、期限を見定めて対処しなければなりません。
 小さい問題はできるたけ問題にせず、すぐにかたづけられる問題はちゃんと終わりにすることです。また、過去の問題や将来の心配などを必要以上につけ加えないことです。
 大きい問題は部分やステップに分割して小さい問題にして、一つ一つ考えて解決していけばいいのです。
 時間がかかる重大な問題には、じっくりと取り組む覚悟が必要でしょう。

 一つ一つ問題を考えるのにいいのは、紙に書いて考える方法です。紙に書くことで問題を整理することができます。同じ考えを繰り返さずにすみます。(3章「ヘタな迷い方/いい迷い方」の堂々巡りを避ける方法も参考になると思います)読み返してみることで少しは客観的に考え直すことができます。かたづいた問題は線を引いて消してしまえば、きちんと終わりにすることができます。時間を置いて考え直す時には、前に考えたことを思い出し、次に考えをすすめることができます。

 抱えている問題がよくわからなくなってしまったり、どうしたらいいかわからなくなってしまった場合には、一度問題を整理してから「一つ一つ考える」ことを心がけてください。問題が多くても一つ一つ対処していくしかないのですから。



77 「それはそれ、これはこれ」〜悪い影響を及ぼさない〜

 複数の問題を一緒にしないで「一つ一つ考える」際に重要なのが、「それはそれ、これはこれ」という考え方です。

 一時のいさかいや一部の意見対立があっただけで、その相手のことをすべて否定的に考えてしまうのはよくありません。「坊主憎けりゃ、袈裟まで憎い」のように、特定の人のすることや言うことのすべてがイヤだと思ってしまっては、取りつく島もありません。「それはそれとして、これはこれ」と、その時々・その事々で判断したほうがいいのです。
 一つの問題があるからといって、やるべきことをやらないのもよくありません。「××だから、○○しない」では、さらに悪い状況にしてしまいます。「それはそれ、これはこれ。やるべきことはやる」というのがいいのです。
「一事が万事」のような考え方も危険です。一つ(一部)のことがダメならすべてダメ、この人を失っては生きていけない、この夢をあきらめたから夢はもうない、これが得られなければ幸せになれない、・・・。一時的な感情としては理解できますが、それを理由に多くをあきらめてしまうのはよくありません。「それはそれでしかたがない。でも他にもある(はず)」です。

「是々否々」という言葉があります。「いいことはいい。悪いことは悪い」とその事々・その時々に判断することです。
 たとえば、「私はNoと言えない」と言う人がよくいます。頼まれるとことわれない、ことわったら相手に悪いのではないか、ことわったことが原因で関係が悪くなったらどうしよう、などと考えてしまいます。そんな時に「いつもはいつも。今回は今回」とことわることがあってもいいと思うのです。
「Yesの時には(喜んで)Yesと言い、Noと言うべき時にはNoと言う」ことができたら、と思います。

 人はともすると悪いことが一つあると、他のことにまで悪い影響を及ぼしてしまうことがあります。それが問題を増やしたり大きくしたりしてしまう元にもなってしまいます。「それはそれ。これはこれ」と一つ一つ考えるように心がけられたら、と思います。



78 「本当? 絶対?」〜自分の考えを疑ってみる〜

 抱えている問題について考えてイヤな気もちになっているのに気づいたら、その時の自分の考えを疑ってみたほうがいいことがあります。イヤな気もちになる考えには不確かなものが多いのです。不確かなものをそのまま信じてくよくよするのはバカらしいのではないでしょうか。
 イヤな気もちになった時に考えていたことを、「本当?」と一度疑ってみることをおすすめします。

「あの人は自分のことをこう思ってる」「きっと嫌われている」「これをすると相手にこう思われる」・・・「本当?」。人の心はいくら考えても自分にはわかりません。それをわかったつもりになって、その上信じこんで、勝手にイヤな気もちになるのはおかしいと思いませんか? 自分の気もちを人が「わかるよ」と言ったら、信じられますか?
「きっとうまくいかない」「悪いことが起きるに違いない」「できないに決まっている」・・・「本当?」。将来のことは確かにはわかりません。将来のよくないことを考えたら、誰だって暗い気もちになってしまいます。少なくとも「絶対にそうなる」と言いきることはできないのではないでしょうか。
「自分は××だ」「何をやってもうまくいったことがない」「自分にはいつだって悪いことばかり起こる」・・・「本当?」。そういう部分もある、そういうこともある、そういう時もある、・・・ってことじゃない?

 ここに書いた例は極端なものですが、イヤな気もちになる考えは「本当?」と疑ってみる価値はあると思います。少しでも疑わしい気がしたら、「絶対?」と念を押してみればいいと思います。「本当? 絶対?」に、「絶対に本当」と言いきれるのなら、信じてもいいでしょう。
 自分の考えはいつも絶対に正しい、人の考えることが手に取るようにわかる、先のことを正しく予想できる・・・そんな人がいるとしたら、きっとくよくよなんてしないのではないかと思います。自分の考えにそんなに自信があるというのは、逆に何か問題があるような気がします。

 自分の頭の中だけで考えた、自分にははっきりとはわからないことや絶対とは言えないことを無条件に信じて、くよくよするのはどうかと思います。「本当?(絶対?)」と自問して、「わからない」「絶対とは言えない」ということに対しては、「そうじゃないかもしれない」と考えられるだけでも、気もちが少しはラクになります。
 ふだん「自信がない」と思うことが多い人には、特におおすめししたいくよくよしない考え方です。



79 「悪い気分に流されない」〜問題を大きくしないために〜

 人の考えは気分に左右されます。悪い気分の時には悪い考えをしやすく、いい気分の時にはいい考えがしやすいのです。
 イヤな気もちは、多かれ少なかれ尾を引きます。それが悪い気分になって続いてしまいます。悪い気分は悪い考えを呼びやすく、そのためにさらに悪い気分になってしまうことがあります。
 気分が悪い時には、物事を悪く悪く考えがちです。あった出来事を悪く悪く考えたり、これから先のことを悪く悪く考えたり、人のことを悪く悪く考えたり、自分のことを悪く悪く考えたり、・・・。運が悪い/生まれが悪い/親(の育て方)が悪い/社会が悪いなどと考えてしまう人もいます。

 何かを考えてイヤな気もちになった時、「気分が悪いからこんなふうに考えてしまうではないか?」「感情的になっていないか?」「今は気もちが沈んでいるからではないか」などと考えられれば、と思います。
 気分が悪いことに気づければ、考え方を変えるきっかけになります。

 まずは、今考えている事を考えるのを中断することです。「あとで考えよう」「何かいいことを始めよう」(ともに1章参照)などと考えればいいでしょう。
 さらに、気分転換ができれば後の生活に悪影響を及ぼさずに済みます。気分を変える方法はたくさんあります。気分転換法と呼ばれるものがいろいろあります。くよくよしやすい人の中には、イヤな気分の時に自分の気分を変えようと努力しない人が多いような気がします。気分は自分である程度は変えることができます。自分の得意な気分転換法をいろいろ持っていれば様々なケースで役に立つでしょう。

 悪い気分に流されて悪い考えを重ねると、さらに気分を悪くさせるだけでなく、その問題を心の中で大きくしてしまいます。悪い考えに基づいた行動で現実問題を悪化させてしまうことにもなりかねません。そのような悪循環が問題を大きくしてしまうのです。
 悪い気分を生む考えを早めにストップして、気分を変えるように心がけることができるようになれば、様々な問題を今よりも小さくすることができるでしょう。



80 「考えることはいいこと、考え過ぎはくよくよの元

 悩みや問題を抱えている時に回避しなければならないのは、そのことで疲れ切らないこと、生活に支障をきたさないことです。そのためにはまず、考え過ぎないことです。
 「考えるのはいいこと、考え過ぎるのはくよくよの元」
 何でも長時間力を入れっぱなしでは疲れるし、つらくなってくるものです。
 悩ましくなってきたら、「(ちょっと待て。)考え過ぎかな?」と自問できたら、と思います。考え過ぎだと気づいた時には、考えるのを少し休んで、できれば気分転換をしたり何か愉しめる時間を挟んで、休み休み考えるのがいいでしょう。

 どんなに大きな悩みがあっても、一日中そのことを考え続けてはいけません。それでは心身ともに疲れきってしまいます。生活にも支障がでます。その悩みがいかに重要なことでも一日に一時間とか時間を限って考えることが重要です。今度はいつ(どのくらいの時間)考えよう、と次に考える時間を決めるのもいい方法です。
 考える時間には集中して考えます。ただ過去の出来事を繰り返し想い出したり、人のせいとか自分はダメだとか考えたり、今後の悪い結果ばかりを考えていても、つらいだけで問題解決には近づけません。無意識に考えてしまう時には、このような考えが多いのです。今は集中してちゃんと考えよう、というしっかりした意識を持つことも重要だと思います。

 悩みや問題について考えても、イヤな気もちにさえならなければ、それは“くよくよ”ではありません。考えに行き詰まって悩ましくなってきたら、気分転換をしたり、違うことをしてから考え直したほうがいい考えも浮かびやすいと思います。
 抱えている問題を考える時間と考えない時間を意識してコントロールすることが、くよくよしない方法であり、悩みや問題をうまく考えることにもつながると思うのです。それは難しいことですが、心がけしだいで少しずつできるようになるものです。



81 「悩みがあってもそれなりに暮らす」〜生活の一部〜

 悩みや問題を「考える時」には、できるだけ苦しくないで(自分の心にとって)いい答えが見つかるようにうまく考えられたら、ということを書いてきました。
 もう一つ大事なのは、悩みや問題を「考えない時間」をどう過ごすか、ということです。

 やるべきことがある場合には、そのことに「集中しよう」「何か工夫してみよう」「愉しもう」などと考えられたら、と思います。一つの悩みのせいでやるべきことをちゃんとやらないと新たな問題を生んでしまい、“くよくよ”“イライラ”の悪循環に陥ってしまいます。
 自由な時間には、好きなことや愉しめることや夢中になれることなどの気分がよくなれることをやるように心がけるのがいいのです。悩んでつらい時ほど安らかな時間や愉しめる時間を持つことが必要なのではないかと思うのです。そうしないと心が(体も?)まいってしまう心配もあります。心身の調子が悪くなってしまっては、生活を愉しむことがさらに難しくなってしまいます。

 実際にはほとんどの人は悩みや問題があってもそれなりに暮らしているのだと思います。でも悩みや問題をどのくらい苦にするかは、人によってずいぶん違うのではないかと思います。
 一つの悩みや問題が人生のすべてではないし、生活のすべてではないということは頭ではわかると思います。あとは感情の問題です。この本に書いてあるような考え方が実践できれば、イヤな感情を軽くできます。自分の考えのコントロールもしやすくなります。
 そう簡単には解決できない問題を、「すぐに解決しなくちゃいけない」と考えるより、「悩みや問題はあってもそれなりに暮らそう」と考えたほうが、現実的ではないでしょうか。重大な問題とどうつきあっていけるかがくよくよしないためのキーポイントです。



82 「今だけは」〜頭から離れない悩みへの対策〜

 悩みや問題が頭からなかなか離れず、ついついその事を考えてしまって悩ましい時間を過ごしてしまうことがあります。
 そんな時には、「今だけは」という考え方をおすすめします。
 悩みや問題を無意識に考えてしまうのはしかたがありません。自分のイヤな気もちに気づいて、その事を考えるのをやめればいいのです。そんな時に使えるのが「今だけは」という考え方です。

 職場を離れた今だけは仕事のことは忘れよう、イヤな人といっしょでない今だけはその人のことを考えるのはよそう、ご飯を食べている時だけは味わって食べよう、ちょっと一息ついた今だけはやすらかに過ごそう、好きなことをしている今だけは熱中しよう、休日の今日だけは楽しく過ごそう、・・・。
 今だけは「そのことを忘れよう」「考えるはよそう」「今のことに集中しよう」「楽しく過ごそう」というような考え方です。

「今」を小さく区切ればできることも多いと思います。そんな小さな「今だけは」でも、それを一つ一つつないでいくことで時間を増やすことができます。
 「後で考えよう、だから今だけは」と考えるのもいいでしょう。
 「今を大切にする」という意識も必要ではないかと思います。

 今はこの問題で悩ましい思いをしたくない、考えたくないと本気で思うのなら、「どうしても忘れられない」「頭から離れない」などとすぐにあきらめずに、小さな「今だけは」ができるように気合いを入れて努力してみてはどうでしょうか。苦悩から自分を救うために。



83 「心が疲れた時には」〜どうしても前向きになれない時〜

 心が疲れた時、どうしても前向きな考え方ができない時があります。
 そんな時、「こういう時もある」と自分で言うことができれば、それだけでも少しはラクになれます。
「疲れているんだ」「きょうはきついなぁ」「ダメージ大きいみたい」「ちょっと落ち込んじゃったかな」などと、今の自分の状態をわかった上で、「こういう時もある」と受け入れるところから、次のことを考えるのがいいのです。
 前向きな考え方ができないのも、人のことを悪く考えたり自分のことを悪く考えたりしてしまうのも、落ち込んでしまうのも、「疲れているからだ」と気づくことができれば、「あとで考えよう」「(寝てから)明日考えよう」などと考えることができます。

 かと言って、安易に「疲れている」と言ってしまうのは問題がありそうです。「疲れた」が口ぐせになっている人もいます。少しぐらい疲れていても、自分を叱咤激励する時があったほうがいいと思います。
「もう少し頑張ってみよう」「元気出そう」「とにかくやってみよう」「もうちょっとしっかりしようよ」「(このくらいのことで)負けてたまるか」などと自分で言えたら、と思います。人から言われたら言い方とかタイミングとか言った相手によって素直に受け取れないことも多いのですが、自分(の口/心)からその状況に合った一言が出せれば、きっと効果はあります。
 どうしてもできない時には、「こういう時もある」でいいと思います。「できない時」の判断は難しいのですが、自分を叱咤激励して努力してもできそうもない時には無理はしなくていいと思います。

 疲れている時には、休養と栄養が必要です。心が疲れている時には心の休養と栄養です。心の休養は、寝ることの他に、やすらいだ時間やくつろいだ時間や落ち着いた時間などを持つことです。心の栄養は、楽しいなどのいい気分になることです。
 私は「疲れているなぁ」「きついなぁ」と自覚した時には、いつもより気合いを入れていい気分になれる時間を大切にします。そうしないと、「まいってしまうのではないか」と思うこともあります。風邪ぎみの時には意識して、栄養のあるものを食べてよく寝るのと同じです。
 また、心が疲れた時に体を動かすことが心を回復させるために役立ちます。たとえば、散歩にでて新鮮な空気を吸いながら歩いてみるといいでしょう。好きな歌を口ずさんだり鼻歌をうたいながら歩くと気分がよくなってきます。草花などの自然に目をやる心の余裕がもてることも大事だと思います。また、スポーツを夢中になってやれば問題から頭を解放できます。汗をかき爽快感を味わうことで心に栄養を与えることができます。体の疲れでぐっすり眠ることができれば心も回復するでしょう。
 悩みや問題を抱えている時ほど、心身の健康管理が重要なのではないでしょうか。

 心が本当に疲れた時にはくよくよしない考え方も難しいかもしれません。でも、「(疲れているんだ。)こういう時もある」と考えられれば、「まぁいいか」「明日があるさ」くらいは言えるのではないでしょうか。そういう時もあるのです。



84 「問題解決より、苦しまない自分」〜もう一つの方法〜

 悩みや問題があると、そのために苦しみ、生活全体が“くよくよ”としてしまうことがあります。問題を解決するいい方法が見つかればいいのですが、すぐに解決できるようなことなら苦しむような悩みにはなっていません。
「問題が解決しなければ、楽しく生活できない」などと無意識に思い込んで、苦しんでしまっていることはないでしょうか。
 問題解決の他に、「(問題で)苦しまない自分になる」というもう一つの方法があります。

 生きていく中ではすぐには解決できない問題があります。人生の中では問題が次から次へと起こります。
 問題を抱えていても、たいして苦しまずに生活を愉しみながら、上手に考えていくことが望ましいのです。その問題について考えても苦しみさえしなければ、問題としては残りますが、悩みではなくなります。悩み苦しまなくてもよくなるわけです。
 悩みや問題を解決できないからとくよくよしてもしかたがありません。その時にできることをすればいいのです。つらい時には少しでもラクに、イヤな気分は少しでも軽く、沈んでいる時には少しでも元気になれるように、落ち込んでる時には少しでも希望が持てるように、ふつうの時には少しでもいい気分に、・・・このような考え方を心がけるのが自分のためなのです。
 それができるような自分になることが、その問題に対処する方法であり、今後のすべての問題に対処する際にも役立つ(能力を身につける)方法でもあるのです。

「くよくよしない自分になる」という目標を持ち、努力すればいいのです。たとえば、この本に書いてあるようなくよくよしない考え方を身につけていくことです。そういう目標を持っていれば、生きていく中で起こる問題は「いい経験」(4章参照)、人間関係で問題のある相手は「いい練習相手」(2章参照)のようにも考えられると思います。

 問題を解決することが唯一の方法ではなく、「くよくよしない自分になる」という“もう一つの方法”があることを思い出してみてください。
 抱えている問題について、いい精神状態で考えられたほうがいい答えも見つけやすいのではないでしょうか。
 人生という長い目で見たら、その時の一つの問題解決よりも、「問題に苦しまない自分になる」ことのほうが大きいと思うのです。





 1章 小さいことでくよくよしないために
 2章 人のことでイライラしないために
 3章 決断で迷ってくよくよしないために
 4章 過ぎたことでくよくよしないために
 5章 まだ先のことでくよくよしないために
 6章 人間関係でくよくよしないために
 7章 自分のことでくよくよしないために
 8章 生きることでくよくよしないために
 9章 大きい悩み・問題に対するくよくよしない考え方
 10章 くよくよしない考え方ができない、とくよくよしないために

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