8章 生きることでくよくよしないために

 
 『くよくよしない考え方』(本多時生)  目次 

 1章 小さいことでくよくよしないために
 2章 人のことでイライラしないために
 3章 決断で迷ってくよくよしないために
 4章 過ぎたことでくよくよしないために
 5章 まだ先のことでくよくよしないために
 6章 人間関係でくよくよしないために
 7章 自分のことでくよくよしないために
 8章 生きることでくよくよしないために
 9章 大きい悩み・問題に対するくよくよしない考え方
 10章 くよくよしない考え方ができない、とくよくよしないために


63 「なんのために生きるのか?」(1)〜生きる目的があれば〜

「なんのために生きるのか?」と考えたことがある人は多いと思います。その答えを見つけた人もいるでしょうが、見つからなかった人が多いのではないでしょうか。いくら考えてもいい答えがなかなか見つからずに、くよくよしてしまう人もいます。何かのきっかけで、ふと「自分はなんのために生きているのだろう?」と空しくなってしまうこともあります。
「なんのために生きるのか?」と考えるのはいいことだと思います。人生の中に何度かはそういう時期があっていいと思うのです。人間にとって大切なものや自分にとって大切なものについて考えてみるのはいいことです。

「なんのために生きるのか?」には、「人(間)はなんのために生きるのか?」と「自分はなんのために生きるのか?」の二つがあると思います。
「人はなんのために生きるのか?」の問いに対する明確な答えはなかなか見つかりません。私は、「わからない」と答えていいと思います。わからないから探すのです。「答えがない」とは思いません。それを求めたい人は探し、必要だと思わない人は探さなくてもかまわないと思います。
「自分はなんのために生きるのか?」の問いに対しては、人それぞれにいろいろな答えがあっていいと思います。「何かのために生きたい」と思える“何か”があればいいのです。夢、目標達成、生きがい、仕事、何かを手に入れる、愛、家族、人の役に立つ、社会に貢献する、いろいろな経験をする、生活を愉しむ、・・・。
 そのために生きたいと自分が心から思えれば、何でもいいのです。
 自分の生きる目的がいくつかあってもいいし、時とともに変わってもいいと思います。新たな生きる目的を見つけながら生きればいいのです。

 多くの人は「なんのために生きるのか?」の答えを持たずに生きています。その答えがなくても問題なく暮らしていくことはできるのです。ただ、人生の中で何かにつまずいた時や、人生の大きな節目の時期などに、「自分はなんのために生きているのだろう?」と、ふと思い、くよくよしてしまうことがあるのではないでしょうか。生きる目的がはっきりしている人は、そういう“くよくよ”はしなくてすむはずです。
 自分の生きる目的を見つけることは難しいかもしれませんが、少し力を抜いてじっくりと探してみてはどうかと思うのです。あきらめずに探し続ければ、自分なりの生きる目的がきっと見つかると思います。そのヒントがこの章の中には書いてあります。



64 「生活を愉しむ意識」〜“楽しくない”生活からの脱却〜

「楽しくない」「なんかつまらない」「何かおもしろいことないかなぁ」「いいことがない」「いい出会いがない」「さびしい」「空しい」「こんな生活を続けてていいんだろうか」などと考えてくよくよしてしまう人がいます。それが口グセや考えるクセになっている人もいます。言葉にならなくても、無意識にそのような生活をしている人も多いような気がします。
 衣食住には困らない、時間の余裕もある、自由もある、・・・。
 恵まれているはずなのに、・・・。
 なぜなのでしょうか? どうしたらいいのでしょうか?

「楽しくない」などと言う人の中には、ただなんとなく生活している人が多いような気がします。生活を愉しもうという意識が足りないのかもしれません。
 生活を愉しむためにいちばんいいのは、「やりたいことをやる」ことです。本当にやりたいことが一つでも二つでもやれていれば、イキイキと生活できるでしょう。それが自分の可能性を少しでも活かすことができるようなことならなおいいでしょう。
 もう一つ大事なことは、やらなくてはならない事をどう工夫してどう愉しめるかということです。誰にでもやらなくてはならない事があります。仕事とか勉強とか家事とか育児などがそうでしょう。やらなくてはならない事をどうせやるのなら、イヤイヤやるよりも少しでも愉しめたほうがいいはずです。「愉しめるように工夫をしてみよう」と一生懸命に考えれば、きっと何か方法が見つかると思います。

「何かおもしろいことないかなぁ」「退屈だなぁ」などと言う時は、「ヒマな時」です。時間があるのなら、自分が何をやりたいのか、どういう生活をしたいのか、どんな生き方がしたいのかなどを考えてみてはどうでしょうか。それがわかれば、これから何をどうすれば自分の生活を愉しめるかを考えられるはずです。
 生活を愉しむ工夫と努力をしないで、退屈しのぎだけのことをして長い時間を過ごしてしまっていいのでしょうか。

 一つの事にくよくよしやすい人は、生活の中の愉しみが少ないのかもしれません。生活の中で愉しめる時間と回数が増えれば、それだけイヤな事を考える時間が減ります。「何かを愉しもう」という心の余裕を持てることが大きいような気がします。



65 「やりたいことを探す」〜4つのヒント〜

 くよくよ生きないために、イキイキと生きるためのいちばんの方法は、「やりたいことをやる」ことではないかと思うのです。生活を愉しむにはやりたいことをやればいいのです。
 ところが、「やりたいことがない」「やりたいことが見つからない」と言う人がたくさんいます。だったら、やりたいことを本気になって探せばいいのです。「自分のやりたいことを見つける」というのがやりたいことではないのでしょうか。
 やりたいことを見つけるヒントをいくつか紹介します。

 一つめのヒントは「好きなものを大切にする」。
 やりたいことを選ぶ基準として、好き/興味がある/楽しいなどの自分の気もちを重視してみてはどうでしょうか。自分の好きなもの(物/事/人)に、今よりも関わることをやりたいことにすればいいのです。
 好きなものへの関わり方を考え直してみるのもいいと思います。物は、つくる/売る/買う/楽しむなどの関わり方。事は、仕事としてか/趣味としてか、自分ひとりでやるか/誰かといっしょにやるか/人がやるのを見るかなどの関わり方。人との関わり方もいろいろとあると思います。
 自分の好きなものを大切にして、関わる回数と時間を増やしていけばいいわけです。

 二つめのヒントは「探す方法を考える」。
 頭を抱えてじっと考えていても、やりたいことはなかなか見つかりません。まずは、探す方法を考えてみてはどうでしょうか。
 たとえば、本の中から探す。自分の好きな本や雑誌の中から探す。書店や図書館に行っていろんな本を見て探す。また、電話帳の中から探してみるのもおもしろいと思います。
 インターネットのホームページを探してみるのもいいでしょう。自分が興味があることに関するキーワードで検索してみると、思わぬ出会いがあるかもしれません。
 街の中を歩きながらでも探す気があれば何か見つかる可能性はあります。美術館・博物館や役所などに行ってみるのもいいかもしれません。
 このように、いろいろなところを探し回れば、それだけ見つかる可能性は高くなります。

 三つめのヒントは「一年あったらやりたいこと」。
「もし一年間を自由に使えるとしたら何に使いたいか?」と考えてみます。その際には、仕事や学業やまわりの人のことなどの現状の制限はいっさい考えないことにします。何かやりたいことが思いついたら、それをやれる方法を一生懸命に考えます。やる気や勇気があればできることなら、思い切ってやってみればいい。誰かを説得すればできることなら、なんとか説得する方法を考えてみる。時間やお金が足りないのなら、時間やお金をつくる方法または時間やお金をかけない方法を考えてみる。もしくは、五年とか十年かけてやればできる方法を考えてみる。
 いくら考えてもやれないこともあります。その時には次にやりたいことを同じように考えてみればいいのです。

 四つめのヒントは「小さなやりたいことも探す」。
「やりたいこと」というと、「すごいことじゃないといけない」と思い込んでいるような人がいます。そういう人は自分がやりたいことがなかなか見つかりません。小さなやりたいことも探してみてはどうでしょうか。
 夢や生きがいなどはすぐには見つからないかもしれません。そういうものが見つかるまで、「やりたいことがない」と何もやりたいことをしないで、つまらない時間を過ごしていていいのでしょうか。大きなやりたいことが見つかるまでは、小さなやりたいことをやればいいのです。そのほうが楽しいし、うまくできれば達成感や自信を得ることもできます。その延長に大きなやりたいことが見つかるかもしれません。

「やりたいことがない」とくよくよ生きないように、自分がやりたいことを真剣に探してみてはいかがでしょうか。やりたいことを探すこと自体がけっこう楽しかったりもします。
 本当にやりたいことがある人は、くよくよしているヒマはないのです。そんな時間があったらやりたいことをやれるはずですから。



66 「やりたいことをやるためには」〜できることをまず一つ〜

「やりたいことをやればいい」と言われても、そんなに簡単にはできないと思ってしまう人もいると思います。
  やりたいことだけをやって生きようって言ってるんじゃないよ。
  自分にできないことをやろうって言ってるんでもないよ。
  自分にできそうなやりたいことを、とりあえず一つやればいいんだよ。
 やりたいことにも大きなものから小さなものまでたくさんあるはずです。その中で今自分にできることを一つやってみればいいのです。自分にできる範囲で一つ一つやっていけばいいのです。

 現在やりたいことがあるのなら、自分のやりたい気もちを大切にして「どうしてやれないのか?」「どうしたらやれるか?」を一生懸命に考えて、最終的には勇気を出せばやれることはきっとあるはずです。
「やれるだけで幸せ」と思えることならやってみたほうがいい。また、「いい経験をするために」と考えればやれることもあるでしょう。
 やりたいことを始めようかどうしようかと迷った時には、3章の「決断するためには」を参照してみてください。

 何かやりたいことを始めれば、その分やらなくてもいいことややりたくないことが自然に減っていくのではないでしょうか。それだけ、自分らしく生きられるようになるのだと思います。
 やりたいことを一つ一つやれるように努力してみてはどうでしょうか。一つでも自分のやりたいことがやれていると実感できれば、イキイキと生活できるし、生きている実感も得られるのではないでしょうか。
 やりたいことを夢中になってやることが、くよくよしないで過ごす方法であり、“くよくよ”の原因を忘れる方法でもあるのです。



67 「生きがいを感じて生活する」〜イキイキと生きるために〜

 イキイキと生きるために役立つものとして、「生きがい」を挙げたいと思います。生きがいがあれば、くよくよすることも少なくなるのではないでしょうか。
 ふつうに生活している人の中にも「何かが足りない」と感じている人が多いような気がします。生きがいはその「何か」になるのではないかと思うのです。

 生きがいが欲しければ探せばいいのです。
 生きがい探しには、二つの方法があると思います。まだ出会っていないものを探すか、すでに持っているものの中から生きがいを見い出すかの二つです。ふつう生きがい探しと言えば、前者を考えると思います。そして、大きな生きがいだけを探す人が多いのではないでしょうか。
 生きがいには、大きな生きがいもあれば、小さな生きがいもあります。大きな生きがいを見つけるのには時間がかかるかもしれません。小さな生きがいならすぐに見つかるでしょう。自分がすでに持っている小さな生きがいを探してみることをおすすめします。とりあえず小さな生きがいを持って大きな生きがいを時間をかけて探し続ける、というのが現実的な方法ではないでしょうか。
 自分が生きがいだと思えれば、思い込みでも何でもいいのです。自分の好きなものややりたいことを生きがいだと思っていいのです。日常的な生きがいでもいいのです。たとえば、一日の終わりにビールを飲んで「あー、最高。生きててよかった」とか、子どもの寝顔を見て「これが生きがい」とか思ってもいいわけです。
 生きがいを感じやすいものとしては、「夢や目標」と「人の役に立てること」があります。また、その中で「自分を活かせること」や「充実感を感じられること」などがポイントになります。そして、続けていくためには「好きなこと」や「愉しめること」が重要です。

 自分の生きがいを持ったら、生活の中で生きがいを実感できることが大切です。
「夢や目標」が生きがいという人は、まず「やりがい」や「生きるはりあい」のような生きがいを感じられます。「自分を十分に発揮できるんじゃないか」「やり遂げることで自分の存在価値を示すことができるのではないか」というような生きがい感もあります。「将来の大きな幸せの予感」も生きがい感につながります。前進や進歩、中間目標の達成などで喜びを感じられたら、それも生きがい感になります。夢や目標に向かって努力していれば日々、充実感という生きがいを感じることができます。また、好きなことや本当にやりたいことならそれができるだけでも幸せ・生きがいを感じられるでしょう。夢を持って生きていること自体が幸せ・生きがいだとも考えられます。自分の夢や目標が人や社会の役に立つことなら、なおさら生きがいを感じられるでしょう。
「人の役に立つこと」が生きがいという人は、「やりがい」や「(その場での)居がい」のような生きがいを感じられます。「自分が人のために役に立つ」ということは「自分の存在価値」にもつながります。実際に人の役に立ったり、人が喜んだりするところを見ることで、喜びとともに生きがいを感じられます。「ありがとう」の一言でも喜びを感じられ、「やっててよかった」「これからも頑張ろう」などと思えます。自分が「人の役に立てる」「人のためになっている」と思えるだけでも、確かな生きがいを感じられると思います。

 自分の生きがいを持って、それをはっきりと自覚して、生きがいを感じて生活できるように努力してみてはいかがでしょうか。
「生きがい」というのは継続するものです。だから自分の生きがいを一度持てば、長い期間に渡ってイキイキと生活することができるのです。



68 「夢も希望もない」〜希望を見い出すヒント〜

「夢も希望もない」という人がいます。それを意識していない人はまだいいのですが、そう意識してしまう人はイキイキと生きることが難しくなってしまいます。「夢とか希望なんてなくたっていい。今が楽しければいいじゃないか」と考える人は、それはそれでいいと思います。
 夢も希望もないという人は、想像力が足りないか、悲観的だからではないかと思います。夢や希望を持つだけだったら、現実には何も変える必要はありません。想像力があれば夢や希望を見つけることができます。想い浮かべた夢や希望について「私には(実現することは)できない」と悲観的に考えてしまうことで、その夢や希望をあきらめてしまうのだと思います。
「夢も希望もない」とくよくよしてしまう人は、夢や希望を持てるように努力してみてはどうでしょうか。

 希望を見いだすヒントをいくつか紹介します。
「幸運との出会い」に希望を見いだす。「今にいいこともあるさ」「いつかチャンスがくる」「きっといい出会いがあるに違いない」など。長い人生にはいい出会いがきっとあります。
「時間の力」に希望を見いだす。「今のつらい時期もやがて終わる」「この悲しみ(すべての感情)もいつかはおさまる」「時間がたてばきっと忘れられる」「必ず平穏な日々がやってくる」など。時間の力は強力です。どんな問題もいずれはなんとかなるものです。
「自分の努力・成長」に希望を見いだす。「今は××だけど、(努力すれば)いつかは○○」「今は見つかっていないけど、探せばきっと見つかる」「一生懸命に努力すればきっと夢は叶う」「自分が人間として成長すれば、小さなことに悩まず、幸せに暮らせるようになる」など。努力を続けている限り、前進している限り、成長している限りは、確実に目標に近づいていくのですから、希望を持つことができます。
「夢や目標」を希望に変える。自分の夢や目標や手に入れたいものがあるなら、それを希望にしてしまえばいいのです。余計なことは考えずに、「○○たらいいな」と言ってしまえばいいわけです。「○○たらいいな。どうしたら?」(5章参照)と考えればなおいいでしょう。

 夢を探す方法は、この章の「やりたいことを探す」と同じです。やりたいことを自分の夢として持てばいいのです。
 夢には、大きな夢も中くらいの夢も小さな夢もあります。今の自分に合った夢を持つことが肝心です。自分に合わない夢は自分を苦しめるだけです。

 希望が持てれば、少しは明るい気もちになれます。心が明るくなれば、ポジティブな考えや行動をしやすくなります。それがイキイキと生きることにつながると思うのです。
 どうしても希望が見いだせない時には、とりあえず「明日があるさ」とか「なるようになる」でもいいんじゃないでしょうか。「夢も希望もない」などと沈んでいるよりもずっといいと思います。



69 「過程を愉しむ」〜いい結果を出すためにも〜

 夢や目標を持てない大きな理由の一つは、失敗や挫折を恐れるからだと思います。それは「結果だけ」を考えているから、とも言えます。夢や目標の達成を目指す「過程」を充分に愉しめるのなら、チャレンジしてみる価値は十分にあると思うのです。

 旅行をする目的は、目的地に行くことではなく、旅の過程を愉しむことです。結果だけを考えれば、「どうせ家に戻ってくるのなら、行っても行かなくても一緒」ということになってしまいます。夢や目標についても「失敗や挫折をしたら価値がない」と考えるのはいかがなものでしょうか。
 ゲームやギャンブルでは、勝つこともあるし負けることもあります。勝ち負けだけにこだわるより、愉しむことも大切だと思います。充分に愉しめれば負けてもいいのではないでしょうか。夢や目標についても同じだと思うのです。
 と言っても、夢や目標の最大の魅力は成功や達成です。その可能性があると思えるからチャレンジするのです。それを重視するのは当たり前のことです。

 ところで、「結果」と「過程を愉しむ」ことは、相反することなのでしょうか。
 私は、過程を愉しむことがいい結果につながるのではないかと考えています。つらいだけのことをイヤイヤやるよりも、少しでも愉しみを見つけながらやったほうがいい努力が続けられると思うのです。それはいい結果につながるはずです。
 素晴らしい結果を出したスポーツ選手が「愉しもうと思ってやりました」とインタビューに答える場面をテレビで見たことがあると思います。「愉しもう」と考えたのはいい結果を出すためだと思います。

 夢や目標の達成を目指す努力の「過程を愉しめない」と言う人は、愉しむ工夫が足りないのではないでしょうか。「愉しむと、いい結果が出ない」と言う人は、愉しみ方に問題があるのだと思います。いい結果を出すための愉しむ工夫があるはずです。
 夢や目標を達成するためには相当の努力が必要です。それを支える自分の気もちが大きいと思うのです。やる気や前向きな気もちなどです。愉しむことや喜ぶことで自分の気もちを盛り上げることができます。また、「愉しむ」という意識があると「余計な力を抜く」や「遊び心を発揮する」というような心の余裕につながるような気がします。
 長期間の努力を続けるためには心身をいい状態に保つことが重要です。効果的な休息やいい気分転換が必要です。その際にも「愉しむ」ことが役に立ちます。事と場合によっては、結果を多少犠牲にしても愉しんでいいこともあるのではないでしょうか。
 もしどうしても愉しめないという場合には、その夢や目標は自分には向いていないのかもしれません。「好きなこと」や「愉しめること」というのは自分の夢や目標を決める大きなポイントだと思います。

 何よりも愉しむ工夫を続けることが大切です。
 うまくできるように自分なりの工夫をする。それで少しでもうまくできれば喜びがあります。工夫することが愉しみになるはずです。多くの成功者はうまくいく工夫を愉しみにしていたのだと思います。
 つらいことや苦しいことも、「これは夢の実現に向かう良い過程/一場面なのだ」と思えれば、少なくともイヤなことではなく、充実感や自信にもつながるのではないでしょうか。困難なことにもやりがいを感じ、それを乗り越えることで得られる大きな達成感を愉しみにできるのだと思います。努力の過程の中に少しでも愉しみや喜びを見い出すことが大切なのです。一つでも愉しみがあれば自分を支える力になります。たくさん愉しめれば夢中になって頑張れるのではないでしょうか。
 前進や進歩を喜ぶ工夫があります。たとえば、進行表や実績表をつけて前進を確認して喜ぶ、中間目標を設定して達成したら祝う、始めた頃の自分と今の自分を比べてみてその進歩を喜ぶ、など。
 日々の充実感を実感する工夫があります。たとえば、夢の実現への過程で行う作業や訓練の終わりや一日の終わりに「今日もよくやった」と思う習慣をつける、自分をほめたり、ビールや甘い物などをごほうびにする、など。一生懸命に頑張った時ほど大きな充実感を得られるのだと思います。
 作業や訓練でやること自体が好きなことや愉しめることならやれるだけでも幸せと思う、うまくできた時やいいことがあった時には素直に喜ぶ、人に喜んでもらえたり人の役に立つことならそれを想像する、夢や目標が達成した時のことをイメージする・・・このような習慣をつけることも役に立つ工夫です。
 他にもいろんな工夫ができるはずです。一生懸命に考えれば、自分なりの愉しむ工夫ができると思います。

 結果よりも過程を愉しむことを重視できるようになると、夢にチャレンジしやすくなります。チャレンジすれば夢が叶う可能性もあります。それ以前、イキイキと生きられるのではないでしょうか。
「過程を愉しむ」ことが大切なのは、人生も同じだと思います。仕事も恋愛も家庭も同じでしょう。結果ばかりを求め過ぎて過程を愉しめないよりも、愉しむことをいい結果に結びつけようと考えたほうがいいのです。そういう工夫と努力を続けることが、過程も結果もよくすることにつながるのではないでしょうか。



70 「不幸を数えて暮らすより、幸せを数えて暮らそう

 くよくよしやすい人は不幸を数えて暮らしているようなものです。
 ここでの不幸とは、考えるとイヤな気もちになることです。「幸せ」「不幸」と言うと、大きなことをイメージする人が多いと思いますが、幸せには大きな幸せも中くらいの幸せも小さな幸せもあります。不幸には大きい不幸と中くらいの不幸と小さい不幸があります。ちょっとイヤな気もちになることは小さい不幸と考えます。
 小さい不幸はいっぱいあり、日々の生活の中でも度々起こります。それを一々数えていたらキリがありません。一つの不幸を繰り返し数えるのも同様です。そのために長い時間をイヤな気分で過ごすことになってしまいます。

 生きていく中ではいろんなことがあります。イヤなこと/いいこと、つらいこと/うれしいこと、悲しいこと/楽しいこと、運が悪いこと/運がいいこと、不幸なこと/幸せなこと・・・。
 自分に関しては、持っていないもの/持っているもの、恵まれていないこと/恵まれていること、欠点/長所、苦手なもの/得意なもの、嫌いなもの/好きなもの、・・・。
 人にはいろんな人がいます。イヤな人/いい人、意地悪な人/やさしい人、無神経な人/気のきく人、・・・。人にはよくない所もあれば、いい所もあります。人づきあいにはイヤなこともあるけど、いいこともあります。
 これらのうちの前者を考えるとイヤな気もちになり、後者を考えるといい気もちになりやすいはずです。

 自分が何かを考えてイヤな気もちになっているのに気づいたら、「不幸を数えているのではないか?」と自問してみてください。「そうだ」「そうかもしれない」と思えたら、「不幸を数えて暮らすより、幸せを数えて暮らそう」を思い出せばいいのです。それをきっかけに「こんなことより、いいことを考えよう」「何かいいことを始めよう」と考えればいいわけです。

 くよくよしやすい人の中には不幸を数えるのがクセや習慣になっている人が多いような気がします。無意識にイヤなことばかりを考えてしまうクセです。まずそのクセを自覚することが第一です。そのクセに気づいたらイヤなことを考えるのをやめて、いいことを考えるように心がければいいのです。
 幸せを探すか、(無意識にでも)不幸を探すかで見つかるものが違ってきます。自分が望むものを探して数えればいいのです。見つけた幸せに心の焦点を合わせれば、他のものは見えなくなります。人は幸せと不幸を同時に数える(感じる)ことはできないのです。

 心が自由な時間に何を選んで考えるかが重要です。
 無意識にイヤなことを考えてしまうのはしかたがありません。それに気づいていいことに考えを向ければいいのです。
 自分で考えを選び、切り替えるということは意識すれば可能なことなのです。
 一日という限られた時間の中で、不幸なことと幸せなことのどちらを数えて過ごしたほうがいいでしょうか。



71 「自分の生き方はこれでいい」〜思い込みでもいいから〜

 自分の生き方に満足していない人は、生きることにくよくよしやすいと思います。
「自分の生き方はこれでいい」と思うことが大事だと思うのです。
 今の自分の生き方は「それなりにいい」はずだと思うのです。現実に則して時間をかけて自分なりの生き方をしてきているのではないでしょうか。
 欲を言ったらキリがありません。自分の理想とは違うからと、現実的に無理なことを自分に要求しても自分を苦しめるだけです。
 自分の生き方に大きな問題があるかもしれません。でもその中でそれなりにいい生き方をしているはずです。(すぐには)解決できない問題はしかたがないのです。

 自分の生き方をバカにしていたら、イキイキとは生きられません。自分が「これでいい」と思えれば、その中で生活を愉しむ工夫もできるのではないでしょうか。今の生き方の中で、小さな何かを変えていくことはできるはずです。
「自分の生き方はこれでいい」と言えるように努力することも大事です。今の生活を善くする努力もしないで、自分の生き方を否定するのはどうかと思います。それが生きることにくよくよしてしまう原因かもしれません。

 自分の生き方を途中で変えてもいいのです。「今の生き方もいいけど、生き方を変えてみるのもいいんじゃないか」のように考えられたら、と思います。
 一つの生き方を通すのもいいし、途中で変わる生き方もいいと思います。自分でよく考えて選び、「これでいい」と思って生きればいいのです。
「自分の生き方はこれでいい」というのは、自分の思い込みでいいと思うのです。同じように見えても生き方は人それぞれで違うのです。自分に合った生き方がいいのです。
 自分の生き方を「これでいい」と言い切るのは難しいかもしれませんが、「(今は)これでいい。この中でできるだけ愉しもう」と考えてみてはいかがでしょうか。同じ生き方をするにしても、「自分の生き方はこれでいい」と思ったほうが、イキイキと生きられると思うのですが。



72 「なんのために生きるのか?」(2)〜一つの提案〜

「自分はなんのために生きるのか?」の答えの一つとして、「やりたいことをやるため」という答えがあっていいと思うのです。実際には「○○をするため」と自分のやりたいことを具体的に表現すればいいのです。自分のやりたいことが、「生きがい」や「夢」につながっていればなおいいでしょう。
「(一つでも二つでも)やりたいことをやれている」と思えることが、イキイキと生活するために役立ちます。

「人はなんのために生きるのか?」には「わからない」と答えていい、とこの章のはじめに書きました。「どうしても答えがほしい」という人には、一つの答えを提案します。
「幸せを感じるため」という答えです。
 人は幸せを感じた時に、「幸せだなぁ。生きててよかった。生きているかいがある。これからも(幸せを感じるために)生きていこう」と思うことができます。幸福感は、生きる価値・生きがい・生きる目的につなげることができるのです。
「幸せになるため」としないで「幸せを感じるため」としているのは、幸福感を大切に考えているからです。
 すごくいい家に住んでいる人や、大金持ちの人や、すごい成功をした人や、すごくいい旦那さん/奥さんがいる人や、すごく素敵な彼氏/彼女がいる人などのすごく幸せそうな人が、もし幸せを感じていないとしたら、すごくもったいないと思いませんか?
 実際にはそういう「幸せそうな幸せでない人」がたくさんいるのです。幸せ(の対象)を持っていてもその幸せを感じられなければ価値がないと思うのです。

「なんのために生きるのか」と考えてその答えが見つかったら、その目的のために努力してみれば、イキイキと生活できるでしょう。
 自分の答えが見つからない人は、「生活を愉しむ」ことを当面の生きる目的としながら、自分なりの生きる目的を探し続けることをおすすめします。それがくよくよしながら生きることからの脱出につながると思うのです。




 1章 小さいことでくよくよしないために
 2章 人のことでイライラしないために
 3章 決断で迷ってくよくよしないために
 4章 過ぎたことでくよくよしないために
 5章 まだ先のことでくよくよしないために
 6章 人間関係でくよくよしないために
 7章 自分のことでくよくよしないために
 8章 生きることでくよくよしないために
 9章 大きい悩み・問題に対するくよくよしない考え方
 10章 くよくよしない考え方ができない、とくよくよしないために

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