7章 自分のことでくよくよしないために

 
 『くよくよしない考え方』(本多時生)  目次 

 1章 小さいことでくよくよしないために
 2章 人のことでイライラしないために
 3章 決断で迷ってくよくよしないために
 4章 過ぎたことでくよくよしないために
 5章 まだ先のことでくよくよしないために
 6章 人間関係でくよくよしないために
 7章 自分のことでくよくよしないために
 8章 生きることでくよくよしないために
 9章 大きい悩み・問題に対するくよくよしない考え方
 10章 くよくよしない考え方ができない、とくよくよしないために


54 「そのままでいいよ」〜弱い自分にくよくよしない〜

 思うようにいかないことやミスや失敗などがあると、自分のことを悪く考えてくよくよしてしまうことがあります。そんなくよくよしてしまう弱い自分にくよくよしてしまうこともあります。自分のことでくよくよしやすい人は、“くよくよ”が長くなりやすく、悪循環に陥って落ち込んでしまうこともあります。
 そんな時に「そのままでいいよ」って言ってもらえたら、そう言ってくれる人がいてくれたら、と思ったことのある人がいるのではないでしょうか。
「そのままでいいよ」と一言自ら言うことができれば、それだけでも少しはラクになれるのですが。

 自分に「そのままでいいよ」と言うことに違和感がある人もいると思います。軟弱な感じがするかもしれません。でも、その一言でラクになれる場合もあるのです。
 しかし、いつも「そのままでいいよ」では、自分を甘やかすことになってしまいます。そこで少し条件をつければいいと思います。
 「今は、そのままでもいいよ」
 「ここは、このままでもいいんじゃない」
「今は」ということは、「いつかは○○」のような考え方です。今すぐにはできないことがあります。でも時間をかければできることはあります。
「ここは」ということは、「他のところは○○」のような考え方です。誰にでもいいところとよくないところがあります。いいほうにも目を向けることです。

 自分のことで“くよくよ”が続くと、次のような大きい問題について考えてしまいがちです。
 自分の性格の問題(暗い/弱い/優柔不断/怒りっぽい/見栄っぱり/疑い深い/わがまま/くよくよしやすい・・・)、自分の能力の問題(何かがうまくできない/人づきあいが苦手/物覚えが悪い/要領が悪い/行動力がない/人に優しくできない/自制できない・・・)、自分のコンプレックスの問題(容姿に自信がない/頭髪・体毛などの身体の特徴がイヤ/赤面などの体の症状が気になる/・・・)、自分の悪いクセの問題(暴言・暴力/ギャンブル/浪費/過食・拒食/・・・)など。
 このような問題を考えたら、暗い気もちになってしまうのはしかたがありません。すぐに直せるようなことなら、くよくよしたりしませんから。

 自分のことを悪く考えて落ち込みそうになった時には、「そのままでいいよ」「今はしかたがない」「ここはこのままでもかまわない」「まぁいいか」などと、一言自分の口から言えれば、“くよくよ”を軽く済ますことができます。



55 「いいことも考える」〜自分の悪いことだけを考えない〜

 自分のことを悪いように考えてなんになるのでしょうか?
 自分の失敗や欠点や性格の問題点などについて考えて、嘆いたり自分を責めたりしても自分をつらくさせるだけです。
 と言っても、自分に関する悪い事がふと気になったり、つい考えてしまうのはしかたがありません。自分の問題を考えてイヤな気もちになったら、その事を考えるのをやめればいいのです。できれば、いい事を考えてからやめればなおいいでしょう。

 一つの考え方は、「××もあるけど、○○もある」です。
 「自分には欠点もあるけど、長所もある」
 「うまくできない事もあるけど、うまくできる事もある」
 このように「××がある」と考えてしまった時に、続けて「○○もある」と考えればいいのです。一つの悪い事だけにとらわれずに、いい事も含めて考えます。一つの事は一面の見方です。反面もあるし、全体もあります。ちょっと高い視点から見ることができるようになると、一つの悪い事だけに注目しなくてすみます。

 もう一つの考え方は、「今は××だけど、いつかは○○」です。
 「今はうまくできない時もあるけど、努力すればもっとうまくできるようになる」
 「今は未熟なところもあるけど、努力し続ければ少しずつ成長できる」
 欠点やうまくできない部分をすぐに改善することは難しいですが、努力すればいずれはできるようになる、ということです。もちろん、この考え方には自分が将来よくなるように努力しようという意志が必要です。

 自分について悪く考えてしまった時には、いいことも考えてから終わるようにすれば、その後に悪い気分を残さずにすみます。このような考え方が習慣になれば、自分のことで落ち込んでしまうのを防ぐ力になるでしょう。



56 「私にはこういう時にくよくよするクセがある

 自分のことでくよくよしてしまう時というのは、状況が限られている場合があります。

「こういう事があった後に」くよくよしやすいという場合があります。自分が何かミスをしてしまった後、仕事の実績や試験の結果が悪かったとわかった後、人からこういうことを言われた後、ある人と会った後、人とケンカをした後、人と別れた後、・・・。イヤな事があった後に、その事を想い出して考えるうちにどうしても「自分のせい」にしてしまう傾向がある人がいます。イヤな事があってもそれを早めに軽く済ませることができれば問題はないのですが、いつまでも悪い気分を続け、考えていくうちに「自分が弱いから」「自分はダメだ」などと考えてしまいます。その時に、こう考えてしまったのは元は言えば「××があったからだ」と気づければいいのです。その事がなかったらこんなふうに考えることはなかった、ということです。

「こういう状況の時に」くよくよしやすいという場合もあります。疲れている時、体調が悪い時、朝の寝起き直後、夕方頃、夜ひとりでいる時、花粉症に悩まされている時、特定の季節、環境が変わった時、・・・。
 自分の問題をくよくよ考えてしまったのは、「こういう時のこのクセが出たんだ。今はこのことを考えるのはよそう」のように考えられればいいわけです。

 また、「この事を考えると」どうしても自分を悪く考えてくよくよしてしまうということもあります。この問題について考えると、この事を想い出すと、この人のことを考えると、将来のこの事について考えると、・・・。そのような時にも、「またこの事を考えてしまったからだ」と気づいて、「何かいいことを考えよう」もしくは「この事を考える時には、自分を責めるような悪い考え方をしないように注意しよう」と考えられたら、と思います。

「私にはこういう時にくよくよするクセがある」と自覚していれば、「あ、またこのクセだ」「こういう時だからだ」「こういう事を考えたからだ」と気づけるようになれます。そう気づけば、自分のことをくよくよと考えるのをストップするきっかけにできます。



57 「しなやかな強さ」〜揺れてもいい、素早く立ち直る〜

 自分のことでくよくよしやすい人の中には、「強くなりたい」と思う人が多いのではないでしょうか。
「自分を強くする」のはいいことだと思います。小さいことでくよくよしない、人間関係で苦しまない、大きい問題でも悩み苦しまない、・・・そんな人になれたらどんなにラクに暮らせるでしょうか。
 ただし、「強くなりたい」と思っても、すぐに簡単になれるわけがありません。「自分を変える」のは大変なことです。そのためには、努力や工夫が必要だし、時間もかかります。でも、努力を続ければ少しずつ強くなれます。

「強くなる」で私がよくイメージするのは「柳に風」です。強い風が吹いたら流されて揺れてしまってもいい。でも、風がやんだらすぐに立ち直る。そんな「しなやかな強さ」がいいんじゃないか、と思うのです。
 風に逆らって無理して踏ん張ると疲れます。暴風にあったらポッキリ折れたり根元から倒れてしまうこともあります。世の中には、力を入れて踏ん張りすぎて心が折れてしまったり病に倒れてしまう人もいます。
 また、何かある度に少しずつ傾いていって、本来の健全な自分に戻れなくなってしまうような人もいます。一つの事で傾いてもすぐに立ち直ることができれば、いろんな事をどんどん付け加えて傾きを大きくしなくてすみます。

「柳に風」流の「しなやかな強さ」のいいところは、「揺れてしまってもいい」と考えられることです。イヤな事や問題に出遭ってしまったら、心が揺れてもいい(しかたがない)。ぜんぜん動揺しない人になんてならなくてもいいということです。
「しなやかな強さ」のポイントは、風がやんだら素早く立ち直ることです。すんでしまったことの余韻に流されずに、普段の自分・本来の自分に素早く戻ることが大事なのです。そのためには、何かあってもできるだけ軽く受け流して、今の生活を大切にすることが肝心です。



58 「まだまだ未熟だなぁ」〜頭をかいて笑ってしまえ〜

 私は何かを考えてイヤな気もちになっているのに気づくと、「(自分も)まだまだ未熟だなぁ」と苦笑いすることがよくあります。そうすると力が抜けて、ラクに考えられるようになります。
 イヤな気もちになるような考え方をしてしまうのは、「自分が未熟だから」だと考えます。もっと成熟した人間だったらくよくよしなくて済むはずです。

「自分は未熟」というのは悪い意味で使っているのではありません。事実を認めているだけです。しかたがないのです、実際に未熟なのですから。
「未熟だ」という自覚があるから、自分を育てようと心がけるのです。未熟だから成長する余地もあるのです。そして、今はその途中なのだから「まだしょうがない」と思うことができます。でも、いつかはあまりくよくよしない自分になれるはずだ、という希望もあるわけです。

 自分がくよくよしているのに気づいたら、「まだまだ未熟だなぁ」と頭をかいて笑ってしまえばいいのです。でもそれに気づける自分は「まぁまぁかなぁ」とか思えたりもします。



59 「自分にやさしくする」〜一言のやさしい言葉でも〜

 自分の問題について、反省したり改善策を考えたり前向きに考えられるのならいいですが、ただ自分を責めたり自分はダメだと思ったりするのでは、つらい思いをするだけです。
 自分のことを悪くばかり考えてしまうのは、自分をいじめているようなものです。もっと自分にやさしくすることを考えたほうがいいと思うのです。自分にやさしくするためにはまず、自分が苦しんでいる時にはいじめるのではなく、助けるようにすることです。

 苦しんでいる自分をどうしたら少しでもラクにできるかを一生懸命に考えてあげるべきです。自分の味方になって本気で考えたら、何か方法を思いつくはずです。もしかしたら、その答えは必ずしも正しいこと、効率のいいこと、カッコいいこと、立派なことではないかもしれません。「まぁいいか」「今はこのままでもいいか」「すんだことはしょうがない」「明日があるさ」「今はとにかく休もう」などでもいいと思うのです。

 自分にやさしい言葉をかけてあげるのもいいことです。
 すごく苦しんだのなら、「もうこのくらいでいいんじゃないの」「これ以上苦しむことはないよ」などと。これからやることに不安がある場合には、「大丈夫。大丈夫」「できる。できる」「ベストをつくせばいい」「なるようになる」などと。何かを始める前に、「元気を出してやろう」「勇気を出してやってみよう」などと。人のことが気になったりあせっている時には、「自分は自分」「マイペース、マイペース」などと自分にやさしい言葉をかけてあげればいいのです。
 また、何かができた時や少しでも頑張った時には、「よくやった」「えらいえらい」などと自分をほめる。ちょっとつらい時には、「もうちょっと頑張ろう」「もう少し我慢しようか」などと自分を励ます。人から「頑張ろう」と言われても頑張れない時がありますが、自分で「もうちょっと頑張ろう」と言えれば少しは頑張れます。
 また、「気分転換をしよう」「ストレスを発散しよう」「何か楽しいことをしよう」「好きなことをやろう」「好きな人と話をしよう」「自分を喜ばすことをしよう」などと、今の自分にとっていいことを提案してあげるのもいいでしょう。

 たった一言でも、自分の口から自分にやさしい言葉を発することができれば、少なからず効果があります。いつでもどこでも自分にやさしくできるのは、自分だけです。
 自分にやさしくすることが少しでもできるようになれば、自分のことでくよくよすることを減らすことができるでしょう。



60 「自分に○○してあげる」〜自分を大切にできる考え方〜

 自分を大切にするとか自分にやさしくするとか、「自分が自分に何かをする」という感覚がわからない人もいると思います。「自分に何かをしてあげる」のようなことを一度も考えたこともしたこともない人もけっこういるのではないでしょうか。
「自分に(を)○○してあげる」という考え方が自分のことでくよくよしないためには役に立ちます。

 たとえば、「自分にやさしくしてあげる」。
・自分が苦しんでいたら、放っておかないで、助けてあげる。
・自分を責めすぎないように、「そのままでいいよ」って言ってあげる。
・自分ではどうしようもなかったら、人に助けを求めてあげる。
・将来の希望を見つけてあげる。「今は××だけど、いつかは○○になる」
 たとえば、「自分を応援してあげる」。
・何かができた時、うまくいった時には、自分をほめてあげる。
・やったことをプラス評価し、自分の能力を認めてあげる。
・自分を信じてあげる。自分に期待してあげる。「きっと○○できる」
・自分を元気づけ、励ましてあげる。「頑張ろう」「もう少しだけ我慢しよう」
 たとえば、「自分を幸せにしてあげる」。
・自分が楽しいことを計画し、実践に移してあげる。
・自分を喜ばすことを考え、してあげる。
・自分がやりたいことや夢を探してあげる。
・いい出会いを求めて、行動してあげる。
・くよくよしない自分になるように努力する。自分を育てる。
 もっといろいろなことが考えられます。
 このようなことが実際に自分でできたらいいと思いませんか?
 ちょっと考えてみればできることもあるはずです。

 時には、今自分が何をしてほしいかを考え、できることなら自分で自分にしてあげればいいのです。一生懸命に考えてあげれば、きっと自分にしてあげられることが見つけられると思います。たとえば、「今なんて言ってほしい?」って自分に聞いて、自分で言ってあげてみてください。そのひと言で少しはラクになれます。

 いつでも自分を大切にしてあげられるのは自分だけです。
 自分を大切にするためには、「自分に○○する」という意識を持てるかどうかが、大きなカギのような気がします。



61 「自分とうまくつきあう」〜慢性的な問題があっても〜

 自分の身体も心も強いに越したことはありませんが、万全ということはないと思います。どこかしら問題を抱えていたり弱い部分を持っているはずです。
 そんな自分とうまくつきあうことが大切だと思うのです。

「一病息災」という言葉もあります。一つぐらい慢性的な病気を抱えているほうが健康に気を使って生活する分、健康に気を使わずに暮らしている人よりも、長生きするということです。
 また、ほとんどの一流スポーツ選手は身体のどこかしらに問題を抱えていると言います。それだけギリギリのところで勝負をしているからだと思います。一時的なケガや病気で練習を休むことはあっても、慢性的に悪い部分でいつも休んでいたら、選手生命は終わりになってしまいます。
 慢性的な問題を抱えてしまっても、それで終わりと考えてはいけないのです。

 自分の体や心に慢性的な問題があっても、ちゃんと生きることや生活を愉しむことをあきらめてしまうのはよくありません。問題とうまくつきあい、問題を抱えている自分とうまくつきあっていくことが大切だと思います。
 そのためにはまず、自分の抱えている問題をしっかりと認知し、自分の一部として「うまくつきあっていこう」と覚悟することだと思います。そして、長い目で改善できるように努力したり、多少の痛みがあってもそれなりの生活をしていく努力と工夫をすることが肝心です。
「自分にはこの問題があるから」とあきらめたり、よりよく生きる努力をしないことがいちばんの問題ではないでしょうか。



62 「自分を育てる」〜くよくよしない自分になる〜

 私は、「自分を育てる」ということを人生目標にしています。
 自分を育てるとは、一言で言えば「幸せに暮らせるような自分になる」ということです。その中には、「くよくよしない自分になる」や「生活をもっと愉しめるようになる」などが含まれています。
 くよくよしない自分になるために、「自分を育てる」という人生目標を持つことを考えてみてはいかがでしょうか。

 自分を育てるためには、まず「自分を知る」ことからだと思います。
 たとえば、自分のくよくよするクセを知ることです。自分がくよくよしやすい事や状況を知り、その時の考え方のパターンを知ることです。クセを知ることで、クセに気づき、クセを中断できるようになれます。
 また、自分の大切なもの(事/人/物)や好きなものややりたいことを知ることも大事なことです。それらを大切に生活できるように心がければいいのです。

 自分を育てるために重要なのは、生活の中で起こったことを「いい経験にする」ことです。イヤな事があった時には、その「いいチャンス」と考えることもできます。その事から何か対策を見つけることができればいいのです。今後のために何かを学ぶことができればいいのです。
 いい経験をするために、夢や目標にチャレンジしてみるのもいいことです。その中で経験する苦労や困難は「いい経験にする」ことができます。その過程で感じられる喜びや充実感や達成感なども自分を育てる要因になります。「夢が人(自分)を育てる」ということがあるのです。
「人が人を育てる」ということもあります。いい師や先輩や友人に出会えることは人生の中でも大きいことだと思います。また、人間関係で問題がある相手も「いい練習相手」と考えれば、自分を育てるために役立ちます。

 自分を育てる方法としては、日々の生活の中で一つ一つ改善していくことです。くよくよするパターンを一つ一つ減らしていく。生活の中で愉しめることを一つ一つ増やしていくというようなことです。その一つ一つの積み重ねが、将来の自分の大きな成長につながるのだと思います。
 目標を持って一歩一歩前進していくことが重要なのです。自分の進歩を実感できるようになると、「今はまだ未熟なところもあるけど、少しずつ成長していけば将来の自分は大丈夫」と思えるでしょう。自分のことでくよくよすることも減るでしょう。




 1章 小さいことでくよくよしないために
 2章 人のことでイライラしないために
 3章 決断で迷ってくよくよしないために
 4章 過ぎたことでくよくよしないために
 5章 まだ先のことでくよくよしないために
 6章 人間関係でくよくよしないために
 7章 自分のことでくよくよしないために
 8章 生きることでくよくよしないために
 9章 大きい悩み・問題に対するくよくよしない考え方
 10章 くよくよしない考え方ができない、とくよくよしないために

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