3章 決断で迷ってくよくよしないために

 
 『くよくよしない考え方』(本多時生)  目次 

 1章 小さいことでくよくよしないために
 2章 人のことでイライラしないために
 3章 決断で迷ってくよくよしないために
 4章 過ぎたことでくよくよしないために
 5章 まだ先のことでくよくよしないために
 6章 人間関係でくよくよしないために
 7章 自分のことでくよくよしないために
 8章 生きることでくよくよしないために
 9章 大きい悩み・問題に対するくよくよしない考え方
 10章 くよくよしない考え方ができない、とくよくよしないために


20 「堂々巡りはやめよう」〜ヘタな迷い方/いい迷い方〜

 生きていく中ではたくさんの選択をします。人生は選択の連続と言えるかもしれません。選択に迫られてあれこれと迷い、なかなか決断できないで悩ましい時間を過ごしてしまうことがあります。
 迷うことがあるのは当たり前です。問題なのは迷い方です。迷い方にはヘタな迷い方といい迷い方があります。
 ヘタな迷い方の代表は、考えの「堂々巡り」です。まったく同じことを同じように考えて、同じように迷って同じように悩ましい思いをしてしまうこと。それを何度も繰り返してしまうことです。それでは悩ましい時間と回数が増えるだけで、決断できない状況は何も変わりません。
 いい迷い方は、少しでも違う考え方をしようと心がけます。「他に違う考え方はないだろうか?」「考えに何か足りないものがあるんじゃないか?」「自分の考えに間違いや思いこみがあるかもしれない」「自分が考える選択以外の可能性もあるんじゃないか?」など。とにかく「堂々巡りはやめよう」と意識できれば、何か工夫できるはずです。

 堂々巡りを避けるために役に立つ方法をいくつか紹介します。
「立場を変えて考える」方法。自分の問題に人が関わっているのなら、相手の身になって考えてみる。また、「自分が尊敬する人(知人/有名人/歴史上の人物など)ならどうするか?」「なりたい自分なら?」などとイメージして考えてみると、望ましい答えが浮かんでくることがあります。
「長い目で考える」方法。「人生の選択としてはどっちがいいか?」「この選択は、自分の人生の中ではどういう価値があるか?」などと考えてみる。「長い目でみればそれほど大きい問題じゃないかもしれない」「どっちを選んでもたいして変わらないんじゃないか」などと、問題を軽く考えることができれば決断もしやすくなります。
「ヒントを探す」方法。自分の問題に関係ありそうな本やインターネットのホームページなどを見つけて、自分の問題を考えるヒントを探してみる。自分にはない考え方や視点が見つかる可能性があります。
「人に相談する」方法。自分と同じような問題を経験した人はたくさんいるはずです。経験者に聞いてみれば的を射たアドバイスが聞けるかもしれません。誰かに話を聞いてもらうだけでも心が落ち着いたり、自分の考えが整理できたりすることもあります。
 他にもいろんな方法があるはずです。そういうものを探してみるのも一つの方法です。

 人生の中での重大な問題では迷う(よく考える)時間が必要なのです。そういう時に苦しい迷い方・ヘタな迷い方はしないほうがいいし、できればいい迷い方をしたいものです。



21 「決断しない決断」〜力んでしまうから疲れてしまう〜

 何か問題を抱えて迷っている時、私は「決断をしない決断」をすることがあります。「今は決断しなくてもいい」と決めるのです。そうすると気もちがラクになります。

「今は決断しなくてもいい。今はいろんな可能性を考えてみよう」「一ヶ月後に決めよう。それまではもう少しラクに、いろいろな角度から考えてみよう」などと考えることがあります。決断を急ぐと、すでにある選択肢の是非や比較だけの考えになりがちです。
「この問題は、夜寝る前にだけ決断するかしないかを考えよう。その時に決断しない場合にはまた明晩」のような考え方をすることもあります。考える時間を限ってそれ以外の時間にはそのことは考えないようにします。
 疲れている時などは、「きょう答えを決めるのはよそう」「(一度寝てから)明日考え直そう」などと考えます。疲れたり落ち込んだりしている時の判断は、自分でも信頼できないことが多いのです。
「この問題はあとで考えよう。今は他にやりたいことをやろう」とよく考えます。抱えている問題から頭を解放することができ、やりたいこともやれます。
 また私は、「来年以降のことは年末に決めればいい」と考え、人生の大きな選択(の決断)は年末の一時期だけにすればいいと、ここ十年ぐらいは考えるようになっています。年末になると次の年の方針は決まっていることが多く、実際にはほとんど決断に迷うことはありませんでした。
「いつか自然に(または何かのきっかけで)心が決まるような気がする」と、あえて決断をしないこともあります。大きい決断はそういうことが多いような気がします。

 そう簡単に決められない問題を「決めなくちゃいけない」と力んでしまうから、悩ましい思いをしてしまい、疲れてしまうのだと思います。また、決断を急ぐと狭い考えをしがちになり、他にあるかもしれない方法や考え方を見い出すことが難しくなります。
 決断をしない決断は、決断をするまでの間を必要以上に苦しまずに、今を大切にするための考え方です。決断する時には決断します。



22 「○○もよし、□□もよし」〜80点と78点、だから迷う〜

 いくつかの選択肢で迷った時に役に立つのが、「○○もよし、□□もよし」という考え方です。迷うからにはいずれにも良い所があるはずです。そこに主な視点をもっていくことで、選択がしやすくなります。たとえば、
 「この仕事を選んでも良さそうだし、あの仕事も良さそう」
 「転職するのもいいし、今の仕事を続けるのもいいんじゃないか」
 「結婚するのも幸せ、独身でもいろんな幸せがある」
 「新しいことを始めるのもいいし、今はこのままでもいいんじゃないか」
 このように考えられれば、どちらでもいいわけですから、選びやすくなります。
 いくら考えてもどちらがいいか判断がつかない場合には、どちらを選んでもいいのではないでしょうか。もし点数をつけられたら、80点と78点というような場合が多いような気がします。100点と0点ということはないはずです。一方は良くてもう一方は悪いという選択ではなく、「どちらを選んでもそれなりにいい結果になる」と考えればいいわけです。
 選択肢の差が少ないために悩んだり、多くのいい選択肢があり過ぎて悩んでいる人も多いのではないでしょうか。選べる余地のない人から見たら、ぜいたくな悩みかもしれません。

 いくつかの選択肢で迷う時、どのような比較をするでしょうか?
 選択肢にはそれぞれプラスの面とマイナスの面があります。わかりやすく、「○」と「×」ということにしましょう。
 ○と○の比較。こっちもいいけどあっちもいい、というのはうれしい悩みです。時間とかお金がいっぱいあれば、自分の体が二つあれば、人生が二度あれば、両方選びたいくらいです。
 ○と×の比較。この場合には迷いません。○がいいに決まっています。
 ×と×の比較。こっちもイヤだしあっちもイヤ。このままではなかなか選べません。どちらかというと、という選び方はあります。もう一つの方法は、×と思っていることの○の面を見ることです。迷うからには○の面・良い所が必ずあるはずです。良い所を明確にすることで、○と○の比較、「○○もよし、□□もよし」という考え方ができるのです。
 マイナスの面があってもプラスの面を重視することが、「○○もよし、□□もよし」という考え方のポイントです。たとえば、一部問題があったり/不安があったり/悪い結果になるかもしれないけど、とにかく好き/得られる喜びが大きい/やりがいがある/安定している/希望がある/やれるだけでも幸せ/いっしょにいられるだけで幸せ/いい経験になるなどのプラスを重視できれば、「これもよし」と考えられます。
「これもよし」と考えるもう一つの方法は、マイナスの面を受け入れることです。決断できない理由で多いのは、何かを恐れているからではないでしょうか。悪い成り行きや結果を想像したり、選択の結果で何かを失うことを恐れたり、大変なんじゃないかと思ったり、自信がないと考えてしまったり、先行きのわからない不安や変化に対する不安を感じてしまったりすることで、なかなか決断できないことがあります。
「失敗したらその時はその時」「ベストをつくせばいい」「いい経験をすると思えばいい」「なるようになる」などと考えることができれば、マイナスの面は除いて、それを選ぶことで得られるプラスやうまくいった時のプラスなどを優先して、決断することができます。

 ある程度考えたのなら、そこで力を抜いて「どっちでもいいんじゃないの」と考えたほうが(悩み続けるより)いいのではないでしょうか。
「○○もよし、□□もよし」と考えることで、少しはラクに決断できるでしょう。



23 「決断するためには」〜タイミングと6つの考え方〜

 必要に迫られると決断できるのですが、そうでないとなかなか決断できない場合が多いのではないでしょうか。
 Aか/Bか、するか/しないか、やめるか/続けるか、変えるか/変えないかなど、二択(二者択一)で考えていることが、実は三択の場合があります。もう一つは、迷っていて何もしない、悩ましいだけの時間を過ごしてしまう、タイミングやチャンスを逃してしまうなどという隠れた選択肢です。
 二択で迷っている間に、一番よくない第三の選択をしてしまうことがあります。この第三の選択肢の存在に気づいていれば、決断すべき時がわかることがあります。

 決断するために役に立つ考え方をいくつか紹介します。
 一つめは「一番大切なもの」です。「一番大切にしたいのは何?」と自問します。それがわかれば、それを捨てる選択肢は除外できます。それでももし外せない場合には「一番大切なもの」が間違っているのかもしれません。また、一番大切なものを選択するためには他のものを捨てる決心も必要です。
 二つめは「覚悟」です。苦労や困難やリスクを覚悟することです。何かを始めれば、慣れないことに苦労し、様々な困難に出遭い、失敗することもあります。そんな当たり前のことでも、それを恐れていたら決断できません。覚悟すれば決断できます。
 三つめは「後悔しない決意」です。人生の選択の結果は比較できないのです。私たちが経験できるのは一つの選択の結果だけですから。自分が後悔さえしなければその選択の是非が問題になることはないのです。だから、後悔しない決意をすれば決断できます。その時々に最善を尽くす生き方をしようと考えることも、後悔しない決意と同様です。
 四つめは「いい経験」です。「いい経験をするつもりでやってみよう」と考えることで決断できることがあります。どんなことも「いい経験」にできるはずです。「何もしないよりもいい経験をすることのほうが価値がある」と考えられれば、積極的な決断ができるでしょう。
 五つめは「割り切り」です。将来の成り行きはいくら考えてもわかりません。最後は「なるようになる」と割り切ることで決断できます。
 六つめは「このままでもいい」です。決断というと積極的な選択肢を選ぶことをイメージしがちですが、「このままでもいい」というのも立派な選択肢です。自分の今の状況は、自分と現実に合ったそれなりにいい状況のはずです。もしそうでなければ、迷っていません。

 人生には決断すべき時があります。自分と、自分の大切なもののために。



24 「やめるか? そのままか?」〜やめる前にできること〜

「やめるか? やめないか?」という選択で迷ってしまうことがあります。大きなものでは、学校や会社をやめるかどうか、人づきあいをやめる(別れる)かどうかがあります。
 まず、「やめることは悪いこと/してはいけないこと」という思い込みはよくないと思います。場合によってはやめてもいいという考えがあれば、絶望して自暴自棄になることは避けられます。自分の大切なものを守るためには、やめる勇気が必要な時があります。
「やめる」という選択の前に、「休む」ということが可能な場合もあります。その可能性も考えられたら、と思います。

「やめる」と言葉では簡単に言えても、そのことで失うものが大きくて、なかなか決断できないことも多いと思います。ある程度の問題なら「我慢する」という選択もあります。
 もし本気でやめることを考えるのなら、二つのことをおすすめしたいと思います。

 一つめは、「やるだけやってダメならやめる」という考え方です。もし「やめてもいい」という覚悟があれば、今できることがまだあるのではないでしょうか。
 その一つの方法は、会社や学校や人を変える努力をすることです。そのチャレンジをしてもいい、と思える場合にはやるだけやってみればいいと思います。「ダメならやめればいい」「少なくともいい経験にはなるはず」のように考えられたら、と思います。
「半年やってダメならやめればいい」と期間を決めたり、「三ヶ月やってみて、また判断しよう。可能性が見えたら延長し、見えなかったらやめよう」のように、決断の時期を設定する考え方もできます。
 もう一つの方法は、自分を変える努力をすることです。今の状況でも苦しまなくてすむ自分になれるように努力してみることです。「自分を育てるいい機会・場」などと考えられればいいのですが、そこまで前向きでなくても「やめるにしても何かを学んでから」のほうがいいのではないでしょうか。そのままでは、これからもまた同じようなことで同じように苦しむことになってしまうかもしれません。

 二つめは、「何かを始めるためにやめる」という考え方です。
 やめた後には新しい生活が始まるわけです。新たな可能性も生まれます。そこをよく考えた上で、「何かを始めるためにやめるのだ」と言えるようにすることです。「やめたい」という思いはきっかけだったかもしれませんが、やめる最終的な目的は新しい何かを始めるためです。もしやめる前にできることがあるなら、新しい何かのための準備をしっかりしてからやめればいいと思います。また、やめた後にできた大きな時間を有効に使うことを考えてみるのもいいでしょう。

「やめるか? そのままか?」とすごく迷うとしたら、「やめてもなんとかなる。そのままでもそれなりによし」ということなのかもしれません。どちらでも決断したら、その道を信じて進めばいいのではないでしょうか。



25 「始めるか? そのままか?」〜やりたい気もちと覚悟〜

「何か新しいことを始めようか? どうしようか?」という選択で迷うことがあります。そんな時には、まず二つのことをしてみることをおすすめします。

 一つは、自分のやりたいという気もちを再確認すること。具体的には、それをやることで得られるものを想像してみることです。新たな生活をイメージして、その中での愉しみや満足感や充実感を想像してみます。やりたいことが思うようにできた時の喜びを想像してみるのもいいでしょう。やることの魅力が強く感じられれば、決断できるのではないでしょうか。

 もう一つは、恐れているものを覚悟すること。やりたいことを始めることで、やめなければいけないこと、できなくなること、失うものなどがあっても、それは「しかたがない」と覚悟しなければなりません。
 また、新しいことを始める場合には、何かと困難に感じることがあるはずです。ある程度の困難は覚悟するべきです。でもそれを克服していくことが喜びにもなり自分を成長させることにもなります。たいていのことは慣れればなんとかなるはずです。
 そして、場合によっては挫折することもあり得ます。その覚悟もしたほうがいいと思います。でも私は、結果よりも過程を大切にし、成功でなくてもいい経験になる、と考えたいと思います。

 何かを始める時に、過去のつらい経験のために憶病になってしまう人もいます。過去の経験は、新たな経験をよりよくするために活かすことを考えたほうがいいのではないでしょうか。

「新しいことを始めるか?」で上記のようなことを考えてもまだ決断できないのなら、「そのままでもいいよ」ということなのかもしれません。無理をすることはありません。「今はまだ始めない」という選択もいいと思います。
 なんでもかんでもやったほうがいいとは思いません。でも、自分に「やってみたい」という気もちが強くあるのなら、「いい経験をするつもりで」と考えれば、新しいことを始められるのではないでしょうか。



26 「歩きながら考える」〜ダメなら引き返せばいい〜

 何かを始めようかどうしようか迷った時、「歩きながら考える」という選択が可能な場合があります。
 もし、すぐに引き返すことができることなら、とにかく始めてみてから続けるかやめるかを決めたほうが、いつまでも迷っているよりも手っ取り早かったり、正しい判断ができたりします。
 また、始める決断はしなくても、今できるだけの準備してみるのもいい方法です。始めたいことに関する知識を得ることや、決断した後の計画やアイデアをふくらませてみればいいのです。本当にやりたいことだったら、準備をすればするほどやりたい気もちが強くなり決断できるようになるでしょう。

 いくら考えてもやってみなければわからないことがあります。
 実際に歩き始めてみれば、どういう道でどんな感じがするかが実感できます。自分に合っているか、向いているかどうかも感じられるのではないでしょうか。今の自分にはどのくらいできて、何ができないのか、何が課題なのかがわかるでしょう。
 先に進めば、遠くからは見えなかったゴールへの道が見つかるかもしれません。将来の展望も見えてくるのではないでしょうか。

「いい経験をするつもりで」と考えられるのなら、歩き始めればいいと思います。知らない道には、新鮮な経験があり、それだけでも「いい経験」になるはずです。たとえ引き返すことになっても、いい経験と歩いた分の足腰の鍛錬になります。将来、別の道を歩く時の力になるでしょう。
「歩きながら考える」というのは実際にはみんながしていることなのです。選択した道を途中で変えてもいいのです。そのことをいい経験・キャリアを積んだと考えていいのではないでしょうか。

 立ち止まって考えていても何も始まらないし、未経験者の想像だけでは正しい判断材料にはならないのです。始める決断に迷っていつまでもくよくよしているくらいなら、「ダメなら引き返せばいい」という覚悟でやりたいことを始めてみるというのも一つの選択法だと思うのです。



27 「自分のことは自分で決める」〜望みを押し通す方法〜

“人生の選択”と言えるような大きな問題の場合、周囲の人の意見や思惑も考慮しなければならないことがあります。
 自分は「こうしたい」という気もちがあっても、親や配偶者などが反対したり意見が合わない場合があり、相手の意見と自分の望みのどちらを採るかで迷ってしまうことがあります。
 人の意見を聞くのはいいことです。でも自分の人生の問題は最終的には自分で決めます。人が言った意見を選んだとしても、それが自分の選択です。その選択の結果を経験するのも自分です。“人生の選択”の責任は(意見が違った人とのその後の関係も含めて)、自分の人生の経験としてとることになるのです。

 最終的な選択は、相手の気もちと自分の気もちのどちらを大切にするかです。さらに言うと、相手を大切にしたい自分の気もちと、自分の望みを大切にしたい自分の気もちのどちらを採るかということです。相手を大切にしたい気もちが強ければ、相手の意見を尊重すればいいのです。それも立派な選択で、人間として素敵な選択だと思います。相手の意見に同意すると決めれば問題は解決です。

 もし自分の望みを大切にすると決めたのなら、それを押し通せばいいわけです。ただし、相手の援助が必要な場合には押し通すわけにはいきませんから、説得できなければあきらめるしかありません。それはしかたがないのです。今の自分にはそれをやる力が足りないのですから。
 自立してできることなら、自分の望みを押し通すことができます。その方法として、「相手の意見を聞く」と「自分の決断を認めてくれようにお願いする」に分けることをおすすめします。
「相手の意見を聞く」時には黙って聞きます。反論したり説得したりしないで、できれば相手の意見の価値をよく考えてみてください。どこかに一理はあるはずです。相手の話をよく聞く姿勢が大切です。相手の話を全部聞いたら、「よく考えてみます」と言ってその場を離れればいいでしょう。
「自分の決断を認めてくれようにお願いする」時には、「自分のやりたいようにやらせてほしい。自分の人生だから」とお願いし続けます。説得ではなくて、ただただお願いするのです。それを続け、時期がきたら自分の道を歩き始めればいいでしょう。
 相手が認めてくれなくて一時的に関係が悪くなっても、時間をかけてわかってもらえるようにお願いし続ければいいのです。それだけの強い気もちがあれば、きっといつかはわかってくれる(あきらめる?)のではないでしょうか。

 人の意見はあくまでも参考として、「自分で考えて決める」という強い気もちがほしいと思います。そして、自分の選んだ道が「これでよかった」と言えるように、努力を続けることが何よりも大切なのです。自分の選択が正しかったことを実証する(自分がその選択の中でイキイキと生活する)ことが、反対した人に対する何よりのアピールになるのではないでしょうか。



28 「選択がすべてではない」〜選択よりもその後の生き方〜

 人生には重大な選択をしなければならない時があります。しかし、どんなに重大な選択でも、それがすべてではありません。
 重大な選択の決断によって、人生の幸不幸が決まってしまうわけではありません。むしろその選択よりも、その後の生き方のほうが大きいのではないでしょうか。

 まず良くないのは、自分の決断を疑うことです。「本当にこれで良かったのだろうか?」「違う選択のほうが良かったのではないか」などと考えることです。
 一度決断したら、その選択を「これでいい」と思い、「これで良かった」と言えるように生きる努力をすることです。そして、選択した生活の中で愉しむことが大切です。
 選んだ仕事で努力し、その中で愉しむ。やり始めたことを愉しみ、いい経験ができるように努力する。自分の夢や目標を達成するために努力しつつ、その過程を愉しむ。選んだ人と幸せに過ごすことを心がけ、相手の幸せを考える。選んだ生活の中で幸せに暮らせるように心がける。このようなことがその選択よりも大事なのではないでしょうか。

 いちばん良くないのは、過去の“重大な選択”を後悔しながら今を生きることです。「選択を誤ってしまった」「あの時こうすれば良かった」などと考え、それを言い訳に今できる努力を怠ることです。過去に自分が望んだ選択ができなかったことを後悔する人もいます。それを人のせいにしたり、不遇や不運を嘆いてばかりいる人もいます。必要なのは過去の選択を後悔することではなく、現在の問題を改善するために何かを始める決断をすることなのではないでしょうか。
 重大な選択がすべてではありません。現在の状況や幸不幸は、過去の選択よりも今までの努力と現在の心がけのほうが大きいはずです。

 どんなに重大な選択でも、それが生活のすべてではありません。その問題を考えている期間にも、今の生活を愉しむことが重要です。たとえ重大な選択でもあまり悩み苦しまないように、少し肩の力を抜いて考えてみたほうがいいのではないでしょうか。今を大切にするために。



 1章 小さいことでくよくよしないために
 2章 人のことでイライラしないために
 3章 決断で迷ってくよくよしないために
 4章 過ぎたことでくよくよしないために
 5章 まだ先のことでくよくよしないために
 6章 人間関係でくよくよしないために
 7章 自分のことでくよくよしないために
 8章 生きることでくよくよしないために
 9章 大きい悩み・問題に対するくよくよしない考え方
 10章 くよくよしない考え方ができない、とくよくよしないために

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