1章 小さいことでくよくよしないために

 
 『くよくよしない考え方』(本多時生)  目次 

 1章 小さいことでくよくよしないために
 2章 人のことでイライラしないために
 3章 決断で迷ってくよくよしないために
 4章 過ぎたことでくよくよしないために
 5章 まだ先のことでくよくよしないために
 6章 人間関係でくよくよしないために
 7章 自分のことでくよくよしないために
 8章 生きることでくよくよしないために
 9章 大きい悩み・問題に対するくよくよしない考え方
 10章 くよくよしない考え方ができない、とくよくよしないために


1 「まぁいいか」(1)〜一番簡単で役に立つ考え方〜

 小さいことでくよくよしないためのいちばん簡単で役に立つ考え方は、「まぁいいか」です。小さいことにくよくよしそうな時に、「まぁいいか」の一言が自ら言えるだけで“くよくよ”を軽く済ませることができます。小さいことは「まぁいいか」で済ませていいはずです。でも、くよくよしやすい人には「まぁいいか」の一言がなかなか言えないのです。

 小さいことで“くよくよ”“イライラ”することが多いと、知らないうちに長い時間をイヤな気分で過ごすことになってしまいます。“くよくよ”“イライラ”は小さいことのようですが、実は生活に大きな悪影響を与えているのです。
“くよくよ”“イライラ”すると「イヤな気もち」になります。イヤな気もちは「悪い気分」につながります。悪い気分は「悪い考え」を誘発しやすくなります。悪い気分や悪い考えに流されて「悪い行動」をしてしまうこともあります。
 ちょっとしたことで“くよくよ”“イライラ”している時に、さらに何かイヤなことがあると過剰に反応しやすく、思わぬ爆発をしてしまうこともあります。そのきっかけが「小さいこと」だとしたらバカらしいのではないでしょうか。それに小さいイヤなことはしょっちゅう起こります。そのたびに“くよくよ”“イライラ”しているようでは、なかなか心安らかには暮らせません。

 朝、ちょっとしたイヤなことがあって一日中気分が沈んでしまったことはありませんか?
 小さいことで不機嫌になったまま長い時間を過ごしてしまうことはありませんか?
 気分が悪い時に、ちょっとしたきっかけで後悔するようなことをしてしまったことはありませんか?
 小さいことを「まぁいいか」と軽く済ませるようになれば、もっと穏やかな気分で過ごせる時間が増えるでしょう。

 この本の中には「まぁいいか」という考え方が何度も出てきます。「まぁいいか」は、他のくよくよしない考え方と組み合わせることでより効果的に使うことができます。この本を読み終わる頃には、今より「まぁいいか」と言えるようになれるのではないかと思います。



2 「まぁいいか」(2)〜“いい加減”のすすめ〜

 きっと多くの人は、くよくよしてしまうことは自分にとっては「大きいこと」だと思っているのです。だから「小さいことにくよくよするな」と言われても、自分の問題には当てはまらないと考えてしまいます。または、自分が「小さいこと」にくよくよしているのに気づいていないのかもしれません。
 「小さいこと」でも、そのことを繰り返し考えて悩ましい時間が長くなると、自分の心の中では「大きいこと」になってしまうのです。だから、「小さいこと」のうちに軽く済ましてしまうことが大事なのです。
 今自分の心の中で「大きいこと」でも、人生の中では「小さいこと」があります。人から見たらささいなこともたくさんあります。
 私たちがくよくよしてしまうことの多くは「小さいこと」なのです。考え方しだいで(自分にとって)「小さいこと」にすることができるのです。

「まぁいいか」という考え方を使うメリットは、まずその一言でラクになれることです。その事を問題化しないことにより、何もしなくても(考えなくても)よくなるのです。問題化するとその解決がうまくできないと、そのためにまた“くよくよ”“イライラ”してしまうことになります。また、“くよくよ”“イライラ”していたはずの時間を他のことに使えるというメリットも大きいのです。

 くよくよしてしまう要因の一つは完璧主義です。小さいことに対して「まぁいいか」と思えないというのもその現れと言えそうです。
「まぁいいか」はちょっといいかげんな考え方かもしれません。でも、すぐに忘れてしまうような「小さいこと」だったらそれでいいのではないでしょうか。「小さいこと」と「大きいこと」では考え方を変えたほうがいいのです。
「小さいこと」にくよくよしながら暮らすのと、「まぁいいか」とラクに暮らすのとどちらがいいでしょうか。「小さいこと」に正しさや立派さを求めるより、いい加減さがあったほうがいいのではないでしょうか。



3 「こういうこともある」〜当たり前の一言が分岐点〜

 イヤな事があった時、「信じられない」「どうして自分だけが」のような思いがあると、イヤな気もちが強くなり、“くよくよ”“イライラ”が続きやすくなってしまいます。
 そんな時に、「こういうこともある」と自ら考えることができれば、それだけで心が少し落ちつきます。

“くよくよ”“イライラ”しやすい人は、「こうでないといけない」という無意識の思いが強いのだと思います。「物事はこうならないといけない」「自分はこうであらねばならない」「人はこうでなければいけない」・・・。完璧主義の人や正義感が強すぎる人やまじめすぎる人、もしくはわがままな人かもしれません。そういう人は自分の思い通りにならないと過剰に反応してしまいます。また、イヤな気もちを我慢する力が足りないと、キレてしまったり、何かに逃避したり、落ち込んでしまったりしてしまい、次の“くよくよ”の元をつくってしまいます。

 イヤな事があった時に「こういうこともある」と一言心の中で言えれば、イヤな気もちを抑え、過剰反応を防げるのです。「まぁいいか」「気にしない」「今はもうちょっと我慢しよう」などとも考えやすくなります。
 ひとりで落ち込みそうな時には、「同じような経験をしている人もいる」と考えられれば、落ち込む度合いも小さくなり、立ち直りも早くなるのではないでしょうか。

「こういうこともある」というのは当たり前のことです。でも、イヤな事があったその場で一言自分で言えるかどうかが、くよくよしてしまうかくよくよしないですむかの分岐点になるのです。当たり前の一言でも、その後の考え方や気分がずいぶん違ってくるのです。それは試してみれば実感できるでしょう。
 また、「わかっていても(実際にその場では)できない」ということもあります。それは「くよくよしない考え方」全般に言えることです。それができるようになることが「くよくよしない自分」につながるのです。そのためには、それなりの心がけや努力が必要だと考えたほうがいいでしょう。



4 「一年たったら忘れてしまうこと?」〜ほとんどは小さいこと〜

 何かイヤなことがあって自分がくよくよ考えているのに気づいたら、このように自分に問いかけてみてください。
 「これは一年たったら忘れてしまうことじゃないだろうか?」
 多くの場合、「忘れているだろう」と考えられるでしょう。
 ここで「忘れる」とは、思い出そうと意識すれば思い出せるかもしれないが、ふだんの生活では頭に浮かばないことも含まれます。一年後までそのことを思い出してくよくよするようなことがなければ問題はないわけですから。
 一年たっても忘れられない、問題がまだ残っているだろうと思われる場合には、それは重大な問題なのでしょう。「大きい悩み・問題に対するくよくよしない考え方」については9章に書きました。
 一年後には忘れてしまうようなことは「小さいこと」なのです。

「くよくよ考えているのに気づいたら」と冒頭に書きましたが、「(自分は)くよくよしている」と気づくことは難しいかもしれません。実際には、自分のイヤな気もちに気づくことです。イヤな気もちとは、悲しい/悔しい/情けない/イライラ/怒った/悩ましいなどの感じがすることです。イヤな気もちになった時に考えていたことが“くよくよ”“イライラ”の原因です。

 ところであなたには次のような傾向がありませんか?
 「物事を忘れやすい。その時々の出来事にとらわれやすい。過去を振り返るより先の心配をしやすい」
 一つでも該当する人は、たいていのことは一年たったら忘れてしまうでしょう。そういう人にとっては、ほとんどのことは一年たったら忘れてしまうような「小さいこと」なのです。

「小さいこと」だと気づけることが、小さいことでくよくよしない第一歩です。多くの人は、気づかないうちに小さいことでくよくよしてしまって、長い時間を費やしてしまいます。
「小さいこと」だと気づくためには、「一年たったら忘れてしまうこと?」という考え方が役に立ちます。小さいことだと気づければ、「小さいことだ。まぁいいか」などと軽く済ますこともできるようになれるでしょう。



5 「こんなことのためにくよくよするのはもったいない

 生活の中でのちょっとしたこと、自分さえ気にしなければ何も問題がないこと、時間がたてば自然消滅してしまうこと、一年たったら忘れてしまうこと・・・。あなたはこのようなことを考えてイヤな気もちで過ごしてしまうことがよくありませんか?
 ささいなこと、どうでもいいこと、すぐに忘れてしまうような「小さいこと」でくよくよするのはもったいと思いませんか?

 そんな「小さいこと」に時間を使ってしまうのはもったいない。もっと他に時間を使いたいことがあるはずです。
 そんな「小さいこと」にエネルギーを使ってしまうのももったいない。くよくよすると、エネルギーを消耗するばかりでなく、ストレスがたまったり疲れてしまうこともあります。ますます他のいいことをするパワーがなくなってしまいます。
 そもそも小さいことのためにイヤな気分になってしまうことがもったいない。そのためにせっかくの一日が台無しになってしまうことにもなりかねません。

「小さいこと」にこだわってしまうのは、なぜでしょうか?
 感情の問題が大きいような気がします。イヤな事があった後、残っているイヤな気もちにつられてその事を考えてしまうのだと思います。「頭ではわかっても感情が許さない」という人もいます。
 その事を無意識に考えてイヤな気もちになってしまうのは、感情の問題としてしかたがないと思います。でもそのまま感情に流されてイヤなことを考え続けたり、悪く悪く考えてしまったら、イヤな気もちは強くなり、感情の問題を大きくしてしまいます。
 自分がくよくよ考えている事が「小さいこと」だと気づいた時には、「こんなことでイヤな気もちになるのはもったいない」と考えることでイヤな気もちを軽くすることができます。感情はある程度はコントロールできるのです。感情の問題は「しかたがない」部分と「コントロールできる」部分があるのだと思います。

「もったいない」と考えることで、“くよくよ”するのをストップすることができます。感情に流されずにすみます。その分の時間とエネルギーを何かいいことに使えるのではないでしょうか。



6 「あとで考えよう」〜今を大切にできる考え方〜

 自分がくよくよ考えているのに気づいた時、「あとで考えよう」という考え方が役に立つことがあります。
「あとで考えよう」と(心の中で)言えれば、とりあえずくよくよから抜け出すきっかけになります。そう決めれば、「今は考えなくていいんだ」とラクになれます。誰でもイヤなことは考えたくないはずですから。

「あとで考えよう」と言うことで、今を大切にすることができます。
 たとえば、友達といっしょに話をしている時に、自分だけがイヤなことを考えて浮かない顔をして黙り込んでしまったら、その場の雰囲気を壊してしまうことにもなりかねません。楽しんだほうがいい時には、何か気になることがあっても「あとで考えよう。今は楽しもう」。今やるべきことに集中したほうがいい時には、「あとで考えよう。今は一生懸命にやろう」のように考えたほうがいいのです。
“くよくよ”“イライラ”などのイヤな気もちのままで考えると、物事を悪く考えがちになります。人のことを悪く考えて腹を立てたり、自分のことを悪く考えて落ち込んでしまったりします。また、悪い感情に流されて後悔するような悪いことをしてしまうこともあります。「あとで考えよう」とすることでそういうことを未然に防ぐこともできます。

「あとで考える」ことで、そのことが実は「小さいこと」だったと気づくことがよくあります。
「あとで考えよう」と思ったのにそのことを忘れてしまうことがよくあります。ささいなことを忘れてしまうのはいいことです。無理に思い出すことはありません。
 平静な気分の時に考え直してみれば、「小さいこと」だと判断できることも多いのです。

 何かを考えてイヤな気もちになっているのに気づいた時には、緊急性がなければ「あとで考えよう」とそのことを考えるのを中断すれば、イヤな気もちは徐々におさまっていくものです。
 重要なことはあとで落ちついて考えることにして、今を大切にしたほうがいい時があるはずです。



7 「私にはこういうことでくよくよするクセがある」(1)

 自分がくよくよ考えているのに気づいたら、「私にはこういうくよくよするクセがあるんじゃないか?」と考えてみてください。
 そうすると、「こういう時に」「こういう場で」「こういう事で」「人がこういうことをしたり・言ったりした時に」くよくよしてまうクセがある、と気づけることがあります。
「あぁ、私にはこういうことでくよくよするクセがあるんだ」と考えることができれば、それだけでもその場の“くよくよ”から一歩抜け出すことができます。

 自分のくよくよしてしまうクセに、その場で気づくことは最初は難しいかもしれません。一日の終わりにでも、週末にでも、連休の時にでもいいから、自分が生活の中でイヤな気もちになった時のことを想い返してみてください。自分の“くよくよ”に気づいて「あとで考えよう」と思ったことがあれば、そのことを想い出してみてください。そうすれば、その場で考えるよりは冷静に「私にはこういうことでくよくよするクセがある」と気づけるでしょう。
 またさらに、「(そういうことで)こんなふうに考えるクセがあって、こんなイヤな気もちになる」と自分の考え方のクセがわかると、“くよくよ”をストップする際に役に立ちます。自分の「考えるクセ」が実は“くよくよ”の正体なのです。
 くよくよするようなことが起こるのを防ぐことはできませんが、そのことに対する自分のくよくよする考え方を途中でストップすることはできるのです。

 自分にはこういうことでくよくよしてしまうクセがあると気づいたからと言って、反省したり、すぐに直さなければならないなどと考える必要はありません。直そうと思っても簡単に直るものでもありません。無意識に出てしまうのがクセなのですから。
 くよくよしてしまう(考え方の)クセに気づくことは、「自分を知る」ことの一つです。自分を知ることが、くよくよしない自分になるための確かなステップになるのです。



8 「私にはこういうことでくよくよするクセがある」(2)

「私にはこういうことでくよくよするクセがある」と自覚していれば、「あ、またこのクセだ」「またやってる」「いつものクセだ」などと、その場で気づけることが多くなります。
 くよくよするような考え方をついしてしまうのはしかたがありません。クセなのですから。その際に、「またこのクセだ。クセなんだからしょうがない。まぁいいか」のように考えれば、そこでその考え(クセ)を中断することができます。

 クセは気づいた時にやめればいいのです。
 たとえば、傷口をかくクセは、傷口に手がいった瞬間に気づいてやめればいいのです。体の傷だったら、ふと傷口をかいてしまっても痛みがあればやめます。心の傷でも同じように、くよくよ考えてイヤな気もちになっているのに気づいたらその(考える)クセをやめればいいのです。でも心の傷の場合には、痛いのはその傷をつくった原因のせいだとばかり考えて、傷口をかく自分のクセのせいだと気づけない人が多いのです。

 クセは意識してもなかなかやめられません。「このクセをやっちゃいけない」と考えても、思わず、ふと、つい出てしまうものです。その上、クセが出てしまった時に「あんなにやっちゃいけないと思っていたのに」などと、自分を責めることにもなってしまいます。
 クセが出てもいいのです。それに早く気づいて「まぁいいか」とそこでやめればいいのですから。また、クセというのは何度も出てしまうものです。出るたびに気づいてそこでやめればいいのです。何度でも。
 自分のクセにすぐに気づいてやめられるようになると、そのクセが出る頻度が少しずつ減ってくるものです。

 くよくよしやすい人は、くよくよする考え方のパターンがクセになっている場合が多いようです。同じような考えを繰り返して、何度も同じようにイヤな思いをしてしまいます。
 自分のくよくよしてしまう考え方のパターンやクセを一つ知るだけでも大きな成果です。そのクセに気づかずに一生過ごしてしまうことに比べたら。



9 「くよくよしているのに気づいたら、何かいいことを始めよう

 自分がくよくよ考えているの気づいて、「一年たったら忘れてしまうようなことだ。こんなことでくよくよするのはもったいない」「またこのクセだ。まぁいいか」などと軽く済ますことができたら、続けて「何かいいことを始めよう」と考えるのがいいのです。

「いいこと」は、自分が愉しめたり、夢中になれたり、いい気分になれるようなことならなんでもかまいません。好きなもの(事/物/人)のことを考えてもいいし、やりたいことをやってもいいし、先の愉しみについて考えてもいいのです。
 今やるべきことがある人は、それに集中すればいいでしょう。
 夢や目標がある人は、実現に向けて考えたり行動したりすれば、少しはゴールに近づけます。
 好きな人がいる人は、その人のことを想ったり、その人を喜ばせることを考えたりすれば、少しは幸せな気分になれるでしょう。

「こんなことを考えるより、他に考えたほうがいいこと(したほうがいいこと)があるのではないか?」と考えてみれば、何か思いつくはずです。「小さいこと」より自分にとって大切なことがあるはずです。少なくともイヤな気もちになることよりも、いい気もちになれることをしたほうがいいはずです。
 自分にとって大切なことや自分の愉しみを知り、くよくよしたくない時にできる「いいこと」のレパートリーを増やしていけばいいでしょう。

 自分の“くよくよ”に気づけたことが、「いい(ことを始める)きっかけ」にもなるということです。
 また、いいことを始めることでいい気分や夢中になれることが、イヤな気分を改善し、くよくよしていたことを早く忘れるためにも役に立つのです。


 1章 小さいことでくよくよしないために
 2章 人のことでイライラしないために
 3章 決断で迷ってくよくよしないために
 4章 過ぎたことでくよくよしないために
 5章 まだ先のことでくよくよしないために
 6章 人間関係でくよくよしないために
 7章 自分のことでくよくよしないために
 8章 生きることでくよくよしないために
 9章 大きい悩み・問題に対するくよくよしない考え方
 10章 くよくよしない考え方ができない、とくよくよしないために

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